(回顧2017)神戸開港150年 世界と日本での微妙な立ち位置どうなる

20150430神戸開港150年記念ロゴ

 2017年を通じて神戸市などが中心になって展開した神戸開港150年記念行事では、世界や日本で神戸の立ち位置が「微妙」なところにあると再認識させられた。その再認識は神戸の将来を考えるうえで重要なことであったろう。神戸港のライバルである香港や釜山はかなりの強敵だし、それについて日本の意思決定をする東京はあまり関心がなさそうだ。ただ神戸の街には港湾文化とでもいうべき、150年の「蓄積」がある。それが引き続きビジネスでも強みと、思いを新たにできたのではないか。

 2月13〜14日に開いた神戸国際港湾会議では、11カ所の国際港湾と相互連携の覚書(MOU)を結んだ。世界の工場が中国から東南アジアへと南下するなかで、神戸港がアジア発米州向けのトランシップ(積み替え)港として地位を高めるための布石だが、現在は新たな基幹(長距離)航路の開設には結び付いていない。かつて世界の工場だった日本からの輸出は今後も減少が見込まれ、横浜とともに埋没する可能性は残る。少なくとも国内向けには、そうした危機感を発信できたはずだ。

 5月19日の神戸開港150年記念式典を前に発表された「神戸港の将来像」は、発表の1週間近く前に日本経済新聞が報じていた。日本でも重要な港湾が貨物の取扱能力を大幅に拡充する、という「ネタ」であったにも関わらず、きちんと取り上げたのは同紙の地方経済面のみ。東京での神戸港や海運業への関心の低さを浮き彫りにした。もっとも、沖合の新たな埋立地で港湾機能を高める、という当たり前の施策をどう目立たせるかは問われたが、それにしても各紙の扱いは小さかった。

 とはいえ単に節目の記念式典や祝賀行事だけにとどまらず、神戸港のビジネスに切り込んだ点で、一連の記念行事は評価できるのではないか。港のビジネスといえば、なんと言っても集荷だ。西日本の貨物は国の補助金もあって神戸に集まり始めている。安くて便利な港湾への模索を続け、アジアと神戸の航路が増えることには期待したい。神戸にはアジアやロシアに強い海運会社もある。東アジアのハブ港に必要な要素で、足りないものは何かを引き続き点検する必要がありそうだ。

20171217クイーンエリザベス

 そうした中でも強みなりそうなものの1つは、神戸の快適さだろう。外国人乗組員の多い海底ケーブルの保守メンテナンス船を誘致する際、船員のための教会の存在が決め手になったことがあるという。台風の中、なんとか開催に漕ぎ着けた10月29日の「こうべ食の博覧会」がマリンルック(もとのデザインは船員の制服)での来場者を優遇したのは、神戸に根付いた食文化と海外交流との関係を考えると感慨深い。観光客でない外国人が過ごしやすい都市も、まだアジアでは少数派だ。

 年末の「世界一のクリスマスツリー」という唐突感のある行事で、やはり唐突に「阪神淡路大震災の鎮魂」が持ち出されたことに違和感はあるが、神戸で新しいことを試す機運が高まっていること自体は歓迎すべきではないか。3月には世界一有名な豪華客船「クイーン・エリザベス」が神戸に寄港(写真)。初めて日本発着のクルーズを実現させた。世界最大の客船「オアシス・オブ・ザ・シーズ」が神戸港を訪れるのは、いつになるのだろうか。(神戸経済ニュース)
=今年1年の神戸経済に関連する話題を取り上げます

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