(回顧2017)神戸市長選 一点突破では勝てない将来の不透明さ

20170928神戸市長選アイコン

 10月22日に投開票した神戸市長選では現職の久元喜造氏が完勝した。次点の候補に3倍強の大差を付けた完勝だった(表)。元神戸市副市長の新人として挑んだ2013年の市長選では5600票差での辛勝だったが、「選挙に弱い久元氏」との評判を完全に拭い切った形だ。強固な組織力や日銀神戸支店が「拡大」と認めるほどの神戸・兵庫の景気が追い風になった。そのうえで、市政運営に関するビジョンを最も明確に示すことができたのが久元氏だったという点も見逃せない。

20171023神戸市長選の開票結果

 久元氏は「筆まめ」だ。同氏がブログを始めた2013年6月7日から、少なくとも数日に1回、たまに連日という頻度の高さでブログを更新。日々の神戸市長としての仕事や、神戸市の課題、読書などの感想や時事ニュースに関する感想など、実に幅広いテーマで自らの考えを発信している。文章も平易で、市長として何を考えているか、その背景にはどういった経緯があるのかといったことを、分かりやすく示そうとしているようだ。久元氏の対立候補で同等または上回る内容量の情報を発信した候補はなかった。

 さらに神戸市長選を控える8月に、元総務相の増田寛也氏と対談した「持続可能な大都市経営-神戸市の挑戦-」を出版したことで、大都市としての神戸市が抱える課題を具体的に示した。少子高齢化や人口減少は、人手不足(構造的な失業率の低下)という現象などを通じて、身をもって課題と感じる住民は多い。そうした住民にとって、スローガンの「若者に選ばれるまち」は響いたとみられ、三宮再開発も都市経営上の課題と表裏一体の将来展望として受け入れられたに違いない。

20171210神戸市長選回顧

 一方で、久元氏の対立候補は、おおむね神戸市議の政務活動費問題を争点化し、一点突破を狙った。ただ、これは久元氏も指摘する通り、根本的には市議会の問題だ。政務活動費の不正流用で辞職した3人の元市議は在宅起訴された。これによって「神戸市が公金を詐取された被害者として刑事告訴する必要性が後退した」との久元氏の説明は、ひとまず筋が通っていた。市議会の活性化は課題とはいえ、久元氏の理屈に対する説得力を持った反論が対立候補の中に見られなかったのも、有権者が久元氏を選ぶ理由になっただろう。(写真は10月8日の選挙戦第一声で選挙カーから手を振る久元氏=右=と井戸敏三兵庫県知事)

 他に争点もなく、誰が市長になってもよいなら政務活動費問題が投票を決める理由になったかもしれない。ただ、人口減少ひいては都市間競争という、将来を左右する問題に神戸市は直面している。そうした不透明さがあるからこそ、三宮再開発への期待は大きく、芝生化やファーマーズ・マーケットなどで東遊園地が活性化した久元氏の「実績」が好意的に受け止められたのではないか。「市長が若返り、神戸市は何か面白いことが起きるかもしれない」という印象にもつながっている。この点では実は、県政150周年を2018年に迎える兵庫県が7月2日に実施した知事選とは対照的な選挙結果だったといえる。(神戸経済ニュース)
=今年1年の神戸経済に関連する話題を取り上げます

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