住友ゴム、CO2ゼロタイヤ製造工程を公開 現地の水素を活用・白河工場で4月

20230508見学会と1号タイヤ

【神戸経済ニュース】タイヤ大手の住友ゴム工業(5110)は4月18、19日に同社の白河工場(福島県白河市)で、水素エネルギーを活用したタイヤの製造工程などを、報道機関や地元関係者らに公開した(1枚目の写真左=写真はすべて住友ゴム提供)。同工場では1月に、国内で初めて製造時の二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を実現したタイヤ(1枚目の写真右)の量産を開始。タイヤの製造工程で脱炭素化を進めるのと同時に、福島県で生産する水素の「地産地消モデル」の確立もめざす。

 高級車向けのタイヤを生産している製造システム「NEO-T01」の工程で水素エネルギーと、工場内に設置した太陽光パネルで発電した電力を使う。金型に材料を入れて組み立て、熱と圧力を加えて1つのタイヤにする「加硫(かりゅう)」工程で、必要な高温高圧の蒸気を発生させるのに「水素ボイラー」(2枚目の写真)を使う。通常は天然ガスを燃料としてボイラーで蒸気を発生させているが、これを脱炭素化した。加えて太陽光発電のピーク時には、NEO-T01で利用する電力をまかなえる。

20230508水素ボイラー

 生産しているタイヤは欧州の高級乗用車向けで、「ファルケン」ブランドの「AZENIS(アゼニス)FK520」。通常のラインで生産した同型タイヤとともに、すでに4月ごろから現地で販売されている。産業技術総合研究所・福島再生可能エネルギー研究所の古谷博秀所長代理は4月18日にあいさつし、「産業の中でどうしても燃料が必要とされる部分のカーボンニュートラルを手がけた」と指摘。「福島県が、日本が誇っていいタイヤになる」と語り、タイヤ生産でのカーボンニュートラル実現を高く評価した。

20230508水素トレーラー

 水素ボイラーで燃料として利用する水素は、福島県郡山市に水素の製造拠点を置くレゾナック・ホールディングス(4004)傘下のレゾナック・ガスプロダクツから専用トレーラー(3枚目の写真)で運搬して安定的に供給を受けている。加えて4月中旬には、製造時にCO2を発生させないグリーン水素を生産する福島県水素エネルギー研究フィールド(福島県双葉郡浪江町)からも供給を受けた。同施設は東芝エネルギーシステムズ(川崎市幸区)、岩谷産業(8088)、東北電力(9506)による実証施設。福島県内には複数の水素生産施設があり、住友ゴムは今後も県内産水素の調達を続ける。

20230508内堀福島知事

 19日に工場を視察した福島県の内堀雅雄知事(4枚目の写真)は、「地域産業の持続可能性を高めようと、さまざまな魅力ある事業を展開されていることにお礼を申し上げる」と語った。「水素エネルギーをはじめとした(水素の)利活用拡大に取り組み、福島の復興とカーボンニュートラルの実現に向けさらなる挑戦を続ける」と述べ、福島県としても水素の生産と利用が定着するための施策を進める方針を改めて示した。

 住友ゴムは1995年の阪神淡路大震災で、本社を置く神戸市にあった工場を失った。さらに白河工場も2011年の東日本大震災で被災。それだけに、復興に向けた取り組みとして白河工場で世界の技術をリードする取り組みには、力を入れたい考えだ。一方で今回の水素を使ったタイヤの量産を、助成事業に採用した新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の大平英二氏も18日のあいさつで「今後も一緒になって取り組みを進めることを、お約束させていただく」と強調していた。

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