(解説)「地元エコシステム」に金融機関も興味津々 スタートアップ支援で新展開

20230305パネル討論

【神戸経済ニュース】兵庫県、神戸市、神戸商工会議所などで構成する「ひょうご神戸スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」が1日夕方に初めて開いた「金融機関向けオープンイノベーションイベント」が盛況だった。集まった金融機関の法人営業の担当者らは当初の申し込みがあった約80人を軽く上回り、100人超に膨らんだ。会場は三井住友銀の神戸本部ビル2階にある「起業プラザひょうご」だったが、三井住友銀でない大手銀の姿も。さらに地銀など地域金融機関、日本政策金融公庫など政府系も含め、神戸に駐在する約20金融機関から担当者が集まった。これだけの金融機関が興味津々のイベントも珍しい。(写真は当日のパネルディスカッションの様子)

 イベントのねらいは、スタートアップ各社と金融機関とのマッチング(引き合わせ)を「これから進めていくというのを、地元の金融機関と共有すること」(神戸市の担当者)。スタートアップ支援といえば従来は、事業モデルの改善や、資金調達の支援など、主に事業の立ち上げに関わることが中心だった。だが動き出した事業を大きくするには今後、ご近所の事情に詳しい金融機関の力がぜひ必要というわけだ。地元企業の「お困りごと」を解決するようなスタートアップを、金融機関が引き合わせることに期待が集まる。こうした地元のエコシステム(資金循環)で事業が拡大すればスタートアップが新たな融資先にもなるというわけだ。

 背景にはスタートアップを巡る環境の変化がある。これまで注目されたスタートアップには一種の金融ビジネスという側面があった。「連続起業家」の存在が示すように、低金利で行き場を失った投資家の資金を受け入れ、資金運用の一環として新たなビジネスを立ち上げ、少し事業が回り出したらIPO(新規株式公開)や大企業によるM&A(合併・買収)といった形で売却して利ザヤを抜くのが起業家のゴールとされていた。ただ日本の株式市場では「上場ゴール」を受け付けないことが、新規上場した銘柄の株価からはっきりした。それに起業家が増えた結果、責任と愛着を持って事業を育てたいと考える創業経営者も増えた。

 金融機関の環境にも変化の兆しが見えている。世界的なインフレで、長かった日本の大規模金融緩和が終わりを告げるのではないか、という期待が芽生えてきた。これまで手数料収入の拡大に血道を上げていた金融機関だが、金利が上昇すれば融資でも収益が上げられる。金利上昇局面で、地元経済が活性化して資金需要が発生すれば、融資によって一段と地元経済を活性化できるという、金融機関の醍醐味(だいごみ)を味わえるというわけだ。新たな発想で事業を立ち上げたスタートアップと、ノウハウのかたまりである兵庫・神戸の製造業をうまく引き合わせることができれば、双方が有力な新規融資先の候補として浮上しやすくなるだろう。

 イベントではスタートアップに付き物である5社の「ピッチ」(短時間の事業説明会)もあったが、パネルディスカッションの時間には植物性の新食材を開発するSydecas(シデカス、加古川市)の寄玉昌宏代表と連携した三井住友銀・成長事業開発部の滑川広治氏、起業家をマッチングするアドリブワークス(神戸市東灘区)の山田健人代表と連携したみなと銀行の川上和也氏がそれぞれパネリストとして登場。金融機関とスタートアップによる連携の成功例の紹介にも大きく時間を取った。息長く連携するなら、遠くのベンチャーファンドより近くの事業会社。ご近所のほうが意思疎通しやすいだろう。金融機関もスタートアップも、そうした新たな展開に期待を高めている。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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