神戸ABCの旅(13)「M」舞子

●第13回 「M」舞子

 シリーズ「神戸ABCの旅」の第13回です。神戸の地名をアルファベット順に1カ所ずつ訪ねていくうちに、長らく離れていた神戸の土地勘も戻るのではないかという企画です。昨年は1月の「K(神戸駅)」と、7月の「L(ライナーバース)」しか掲載できなかったので、今年こそ最後までいきたいと思います。今回はちょうど折り返し地点。まだ、あきらめてはいないのです。最後の「Z」をめざして前進あるのみです。今年も気長にお付き合いいただければと思います。

20230109舞子駅
JR舞子駅

 「M」で始まる地名は神戸市内に結構たくさんあります。駅名だけでも「元町」(JR・阪神)、「南公園」(ポートライナー)、「みなと元町」(地下鉄海岸線)、「摩耶」(JR)、「湊川」(神戸電鉄)、「御影」(阪急・阪神)などです。「マリンパーク」(六甲ライナー)もそうですよね。そんななかでもJRの駅で神戸最西端にある「舞子」からスタートしてみたいと思います。ところでJR神戸線の舞子駅は普通電車しか停まらない駅だと思っていたのですが、1998年3月のダイヤ改正で快速電車が停まるようになっていたのですね。これは神戸に帰ってきて驚いたことの1つでした。明石海峡大橋の開通に合わせて、高速舞子バス停が開設されたことで、鉄道が通っていない淡路島方面への乗り換えに便利なように、ということのようです。

20230109舞子公園駅
山陽電車 舞子公園駅

 このとおり舞子といえば明石海峡大橋なのですが、明石海峡大橋のそばには兵庫県立舞子公園があって、孫文ゆかりの八角形なのに六角堂と呼ばれる「移情閣」があるのは知られたところ。なので今回は逆に舞子駅から舞子公園とは逆側、つまり北側に降りて歩いてみようと思いました。舞子駅の駅ビルを北側に出ると現れるのは踏み切りでした。山陽電車は舞子駅ではなく、舞子公園駅なのですね。その踏み切りを渡ると、もう上り坂が始まっています。この辺りは六甲山地の西端部で、山と海が接近している場所なのだと分かります。ただ、須磨よりもさらに西にある尾根部の標高は低く、山というよりかは丘陵といったほうが適当な地面の起伏です。

20230109展望台
苔谷公園の展望台より

 舞子公園駅から尾根を目指すと、多くの子供達が遊んでいる「苔谷公園」に到着します。明石海峡大橋に続く高速道路の真上の建設されたのが、この苔谷公園です。高速道路が現れる開口部(トンネル出入り口)の真上には展望台があります。展望台には「明石架橋対策協議会の地元役員」「舞子地区地域整備委員会の各町代表」のコメントを掲示していました。中には「願わくばこの景観が、いつまでも大切にされることを念じてやみません」という毛筆で書かれたコメントもありました。「いつまでも大切に」と願われた景観とは、おそらく明石海峡大橋が美しく見える様子だと思われたのですが、現在の展望台から見える景色は写真の通りでした。眺望を妨げているのは、舞子駅の駅ビルです。わりと台無しですね。駅ビルの完成は2001年だそうです。

20230109坂の途中
下り坂の途中で

 尾根にある苔谷公園から西側の谷に向かって降りてみます。普通に歩道を歩いて坂を下る途中でも、建物の切れ間から、とても美しく明石海峡大橋が見えます。展望台から少しずれただけでも、これほど大きさや美しさを感じられるほど橋がよく見えるのに、ちょうど展望台からの眺望だけ、駅ビルに妨げられるというのも皮肉な話です。一方で街のさまざまな場所から、これだけ美しく見えるのであれば、地元にとって明石海峡大橋の工事を記念する(のではないかと思われる)苔谷公園の展望台が、大橋見物の名所になるという選択肢を捨てて、駅ビルの利便性や経済性を取るのは合理的なのかもしれません。

20230109暗渠
暗渠

 さて坂を下って谷に相当する場所には、片側2車線の大きな道「舞子多聞線」が通っていました。昭和の高度成長期(一般に1955〜73年)に開発が進んだ住宅地ということで、道路沿いのショッピングセンターの規模もそれほど大きくありません。道路の両側にはショッピングセンター以外の商店もちらほら見られます。この辺が開発される前の痕跡(こんせき)も何か残っているのでは、と思って探してみるとありました。暗渠(あんきょ)です。以前は小川に生活排水が流れ込んで悪臭を放っていたので、くさい物にフタとばかりに街中の小川が、主に住民の要望で、どんどん暗渠に変わっていったそうです。この川にもかつては名前が付いていたに違いない、と思うと見つかったのが「まいこ東川ふれあい花壇」という看板でした。この川の名前は「舞子東川」だと分かりました。検索すると暗渠になったのは1963年(昭和38年)。ちょうど高度成長期のど真ん中ですね。

20230109たこせん
たこせん自販機

 舞子駅に戻ってきて見つけたのは、「あかしたこせん」の自販機でした。明石で取れたタコを使っているのかどうか詳しくは知りませんが、永楽堂(明石市)のタコの味がするせんべいを、明石海峡大橋を眺めながら買えるというのは興味深い趣向です。となりの店のテントには「莨専門店」と書いてありました。くさかんむりに「良」と書いてタバコ。それほど古い建物ではないように見えましたが、時代を感じさせる表現ではあります。眺望をさえぎっていた例の駅ビルに戻ってきて、2階の喫茶店でお茶をいただきました。明石海峡大橋から近いこともあり、結局のところ橋を見るには、この建物からの眺望が最もよさそうだと感じて、舞子を後にすることにしました。訪れたのは休日であったにもかかわらず、明石海峡には多くの船が行き交っているのが見えました。
(神戸経済ニュース編集長 山本学)


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