22年のIPO 91社が新規上場、神戸本社の大栄環境に注目・宇田川氏に聞く

20221230宇田川氏

【神戸経済ニュース】2022年は神戸市に本社を置く大栄環境(9336)とmonoAI technology
(モノアイテクノロジー、5240)の2社が新規株式公開(IPO)に踏み切った。両銘柄とも12月に東証に上場し、神戸市本社の会社としては2018年9月のワールド(3612)再上場以来およそ4年ぶりのIPOだった。IPOは統制強化や資金調達で企業の成長を加速するきっかけになるが、投資家に株を買ってもらうという「相手のある話」でもある。今年のIPOを巡る株式市場の動きについて市場分析の第一人者である、いちよし証券の宇田川克己・銘柄情報課長(写真)に話を聞いた。
(聞き手は編集長の山本学)

■駆け込み上場の反動減は見えず
 「IPOの投資環境を見極めるうえで最も注目している指標の1つは上場銘柄数だ。『数は力』という面がある。2022年の銘柄数は91だった。21年の123社から減ったが、東証の市場区分の再編(※)という大イベントがあったのを考慮する必要があるだろう。21年には制度変更を控えた駆け込み上場もあったと考えられるため、その反動減はあまり出なかった。IPOの地合いは悪くなかったといえる」

20221230データIPO

 「実際、初値が公募・売り出し(公開)価格を上回った銘柄数を数えると、72銘柄があった。これを『勝ち』と数えて勝率は79.1%だ。年末にかけて少し押し下げられたとはいえ、夏場にかけて日経平均株価が2万9000円台を回復するなど、大型株も比較的高値で推移するなど、相場全般の良好な地合いにIPOの相場も支えられた。東証グロース市場指数がリアルタイムで算出されるようになった6月以降、初値形成がスムーズになった印象もあった」

■大栄環境、サンクゼールに注目
 「年間を通じて印象に最も印象に残った銘柄を1つ挙げるとすると、大栄環境(9336)だろう。廃棄物処理というと一見地味な印象かもしれないが、同じ業種で既上場の銘柄に比べて規模が段違いに大きく、収益性も段違いに高い。規制が多く経済合理性が働きにくかった業界で、経済合理性が重視されるM&A(合併・買収)によって規模が大きくなり、さらに最終処分場を自社で持つという強みもある。ベンチャーキャピタルの売りが出ないという需給要因だけでなく、事業モデルを評価した買いで人気化した面が大きい。今後も注目しておく必要があるだろう。やはり会社名が漢字だと安心感がある……」

 「もう1銘柄、注目しているのは、食品製造小売りのサンクゼール(2937)だ。こだわりの自社ブランドの食品を、自社店舗も含めて高採算が見込める販売経路に幅広く展開していくという手法は、新しい時代に合った物流のモデルのようにも見える。物流業界は相対的にPER(株価収益率)が低いなど、たとえばハイテクなどに比べて割安に評価されがちだが、そうした中で今後の同社は異色の存在感を放っていく可能性がある。そうなると株価も抜きん出てくる可能性があり、引き続き注目しておきたい」

■掛け声だおれになる?
 「22年のIPO銘柄で少し気になったのは、『デジタル』『DX(デジタルトランスフォーメーション)』といった掛け声だけに後押しされたIT(情報技術)関連銘柄も混ざっているのではないか、という点だ。市場からの資金吸収額は、22年の91銘柄を平均すると1銘柄あたり37億円。過去5年で最も低かった19年に並んだ。小型のIPOが多かったのは必ずしも悪いことではないとはいえ、『上場会社』になりたいということで、時流だけに乗って上場した銘柄が多かったのだとすれば、先行きは期待しにくい」
 
 「たとえば説明会で経営者は、日経平均に採用されているような大企業の取引先がたくさんあると話す。収益基盤に安定感があると思いそうになるけど、大企業の名前がたくさん挙がった割には売上高が十数億円にとどまるといったケースもあった。落ち着いて考えてみると、売上高が小さいのであれば、取引先数が少ない方がまだ成長が期待できるのではないか。仮に経営者のプレゼンテーション能力の高さで上場までたどり着いたとしても、業績が伴わなければ市場には見透かされてしまう」

※東証の市場区分再編
 東京証券取引所は2022年4月4日に株式の市場区分を「一部」「二部」「マザーズ」「ジャスダック」の4区分から、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3区分に変更した。特にIPOが多い新興企業向け株式市場は、マザーズとジャスダックの2区分からグロースに統一し、上場基準も一本化した。

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