住友ゴムとNEC、タイヤ開発「熟練の技」をAIで継承 思考プロセスを表示

20221115開発プロセス

【神戸経済ニュース】タイヤ大手の住友ゴム工業(5110)とNEC(6701)は15日、タイヤを開発する際の「匠(たくみ)」と呼ばれる熟練設計者のノウハウを人工知能(AI)で再現することに成功したと発表した。テストドライバーによるタイヤによる乗り心地の変化といった感想「官能評価」の解釈をAIが学習できるデータに体系化し、AIがいくつかの改良案を示す。さらにAIが改良案にたどり着いた思考プロセスを示すことで、AIが再現する「熟練の技」を若手設計者が引き継げるようにした。(図はタイヤ開発プロセスのイメージ=住友ゴム提供)

 タイヤ設計は従来、理論通りに進まず「勘・経験・度胸」が必要な現場だといわれていた。特に官能評価を受けたタイヤの改良については設計者独自のノウハウが必要で、徒弟制度のようにして引き継がれてきた面もあるという。だがタイヤ設計にも効率化や、働き方改革が求められると、従来の方法は持続できないと判断。引き継ぐ「熟練の技」として、住友ゴムで2年後に定年を控えたデジタル設計担当部長である原憲悟氏を照準に、2020年1月からAIの開発に着手した。AIの技術などを提供し、共同で開発してきたのがNECだ。

 ただ原氏のノウハウをAIで再現したとしても、いったんAIによって自動化すると「この改良案をAIが示したのはなぜか」が分かりにくくなる。それに当初はAIが「正解」の改良案を提示することができても、何年か過ぎれば技術の変化によって、かつての正解が不正解になるという面もある。このためAIが、改良案を提示した思考プロセスを見える化する「グラフAI」を活用することで、プロセスを他の設計者が理解するのを通じた人材育成効果を得るのに加え、AIの性能を維持するためのメンテナンスもしやすくした。

 住友ゴムが「熟練の技」のAI化に力を入れた背景には、開発期間の短縮と費用削減が求められる中で、開発担当者がトライ・アンド・エラー(試行錯誤)を自ら減らす流れがあった。この結果、「最も大切な『失敗から学ぶ』ことが少なくなっていた」(タイヤ技術本部技術企画部の山本卓也氏)という。とりわけ設計者がテストドライバーの運転に同乗できない2輪車のタイヤ開発からAI化に着手。将来は設計以外にも材料配合や総合的な分析、製造でもAIを開発し、「いつでも若手が熟練設計者に相談できるのと同じ環境」を作りたい考えだ。

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