(解説)負ける外為市場介入、新たな日本売りも? 問われる日本「24年」の歩み
- 2022/09/24
- 13:50

【神戸経済ニュース】政府日銀は日本時間22日夕方の外国為替市場で円売り・ドル買い介入に踏み切った。バブル経済崩壊で「日本売り」が起きた1998年6月以来24年ぶりの円買い介入だ。今回の介入を額面通り受け取るならば、今年の3月以降に進み始めた円安が止まらないことに対して、「日本政府は無視しない」というメッセージを市場に送った形だ。だが円相場は再び押し戻される情勢。円安の理由になっている金融政策や輸入超過が一向に転換する気配も見当たらない。特に円安志向の金融政策と、円買い介入というチグハグ状況は「新たな日本売り」を誘いかねない。
政府による市場介入は、できれば避けたいものだ。なぜなら特にドル/円のような巨大な市場では、政府の資金ごときで市場全体に影響を与え、為替レートを誘導することなど、そもそも難しいからだ。つまり介入したところで政府が市場に「負ける」と考えるのが常識的だ。それでも政府が政策転換したのを市場に伝える場合など、何らかのメッセージを伴う場合には介入が円安基調や円高基調を転換させるきっかけになる場合がある。そのメッセージを強力にするために、たとえば他国の了解を得ていることを示す日米欧の協調介入といったテクニックもあるというわけだ。
日本は11年の東日本大震災以降、発電のための石油や天然ガスといった化石燃料(貿易統計では「鉱物性燃料」という)の輸入が増えて、貿易赤字が続いている。貿易赤字は円の海外流出が増加するため円安要因なので、もともと円は売られやすい状況にあった。加えて3月ごろからウクライナ情勢を背景とした資源価格の高騰で貿易赤字が拡大。そのうえ各国の中央銀行が資源価格を含む物価高に対応するため、相次いで利上げに動き出した。日本はマイナス金利を維持(つまり円安を志向)したため、金利が高く利殖に有利な米国に日本から資金が移動して、円売り・ドル買いが加速した。
だから今回の円安を止めるのは合理的に考えれば簡単だ。まずは東日本大震災をきっかけに発電を停止したけれども、まだ使える原子力発電所を発電に使い、鉱物性燃料の輸入を減らすこと。次に日銀が利上げをすることだ。しかし原子力発電所の稼働再開も、日銀の利上げもきわめて政治的な問題になっていて、どちらも簡単ではなさそうに見える。海外からも、そう見えるだろう。そこで円買い・ドル売り介入となると「ああ日本の政府は結局、何もできないんだな」という印象を海外投資家に与え、よけいな円売りを誘う可能性すら出てきた。
日銀本店(資料写真)
高度経済成長が終わり、世界の工場が中国に移り、製造業が空洞化した日本でできることとは何なのか。それは政府が政策によって見つけることができるものなのか、この24年間に、冷静に考える必要があったのだろう。豊かな社会には、なぜ自由が必要なのかという問題にも突き当たる。需要と供給の均衡点で値が付くという経済の原則をもっと大事にしたほうがいいのは、外国為替市場だけではないようにも思える。
(神戸経済ニュース編集長 山本学)
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