(解説)ドローンサミット、試される経済性と安全性 「まず利用が検証に」とも

20220904ハチ駆除ドローン

【神戸経済ニュース】2日まで開催した「第1回ドローンサミット」の開催地として、内閣官房小型無人機等対策推進が神戸市を選んだのは、兵庫県がさまざまなドローンを使った実証実験を支援していたことが背景にある。特に2021年度に支援した事業で、ダスキン(4665)が23年の実用化をめざして開発した「ドローンを使ったハチの駆除」が話題になり、「兵庫県は面白いことをやっている、と声をかけてもらえるようになった」と兵庫県の竹村英樹・産業労働部長は振り返る。こうした動きもあって政府は兵庫県を、国内でのドローン先進地と認定することになった。(写真はハチを駆除する機能が付いたドローン=ドローンサミットを併催した国際フロンティア産業メッセの展示にて)

 兵庫県は19年度から本格的にドローンを使った実証実験の支援を本格化するが、応募する実証事業の多くが「最初のうちは防災や公共施設の点検といった『当たり前』のものが多かったが、徐々に民間のサービスにシフトしていった」(兵庫県の竹村氏)という。防災や公共部門といった、比較的採算にシビアではなく、任務を遂行するために多くの資金を投入してきた分野では、むしろドローンの投入がコスト削減や効率化につながると、受け入れられやすい面があるようだ。ほんの数年間が経過しただけだが、もはや公共部門では実証段階を終えつつあり、社会実装で先行したといえそうだ。

 一方で民間のサービスとして、多くの人がドローンの恩恵を受ける事業モデルを組み立てるとなると、経済性に加えて社会性や安全性への配慮も求められる。ドローンサミットの一環で2日午前に実施したドローンのデモンストレーション「ハーバーランドからポートアイランドへのコーヒー輸送」「ドローン用緊急パラシュートとエアバッグ」は、まさにこうした点を問うものだ。たとえば自動車が世界中にこれだけ普及したのは、利便性、経済性、安全性について、いずれも妥当だと納得する人が多かったからだ。ドローンでも同様に「社会の理解」は普及に欠かせない。

 そうした観点で、慶応大・環境情報学部の武田圭史教授は神戸経済ニュースなどの取材に対し「自治体はぜひ、もっとドローンを活用してほしい」と話す。「ドローンの機体は10万円程度のものからあるので、規模の小さな自治体でも、それほど負担にならないはず」という。「まず利用してみることで、ドローンが心配するほと危険ではないことを検証することにもなる」と指摘する。ドローンに対する社会の理解にもつながるというわけだ。中山間地域では何をするにも人手不足が指摘されるなか、規制の問題もさることながら、ドローンの「食わず嫌い」が視野を狭めているのなら社会全体の損失だろう。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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