【神戸経済ニュース】兵庫県の斎藤元彦知事と神戸市の久元喜造市長は２日、同日まで開催した産業総合展示会「国際フロンティア産業メッセ」の一環で「水素社会の実現に向けて」をテーマに対談し、水素の利用拡大に向けて連携することで一致した。関西電力（9503）が姫路市にある火力発電所での水素の活用に向けて、周辺で水素受け入れ基地を整備する方針を表明したことなどを念頭に、斎藤知事は兵庫県が「サプライチェーン（供給網）の中核を担えるように神戸市と連携しながらやっていく」と強調。一方で久元市長は「兵庫県全体で新たな産業クラスター（集積）を形成していく」と語った。

　対談前のプレゼンテーションでは、斎藤氏は兵庫県が、久元氏は神戸市が、それぞれ取り組んできた水素に関する施策を紹介した。斎藤氏は関西圏と瀬戸内地域の結節点に位置し、兵庫県にとってはエネルギー供給拠点でもある姫路港でカーボンニュートラルポート（二酸化炭素の排出実質ゼロ港湾、ＣＮＰ）に取り組む意義を強調。久元氏は豪州から運んだ水素を、ポートアイランドの水素発電施設で利用し、別だったプロジェクトが供給網の構築という形で結びついたとことを指摘した。

　司会は新産業創造研究機構（ＮＩＲＯ）の牧村実理事長が務めた。主なやりとりは以下の通り。

　－－改めて水素社会が実現する意味とは。

　久元「まずは地球温暖化を防止するという取り組みの一環であるということ。次に兵庫県全体で新たな産業クラスターの形成につなげていく、ということ。３番目に、水素エネルギーの活用を進めることはグローバル社会に対する貢献にもつながる。これが大きな意味だ」

　－－水素社会の推進による地域産業への波及効果は何か。

　斎藤「水素産業はすそ野が広い産業。生産、運搬、利用など、裾野が広く、まずこれを兵庫県で産業として根付かせていきたい。行政としては広域的な枠組みで、仲間の輪を作っていくことが大事。そこをしっかりやるのと、息の長い取り組みになるので、行政としてもしっかりコミットして、安定した体制の中で安心して投資してもらえるようにしたい」

　－－関西電力が姫路を中心に水素を活用する基盤整備に乗り出す方針を表明した。

　斎藤「これまで以上に水素社会、脱炭素を進めていくということで、神戸市との連携はすごく大事だと思っている。歴史も伝統もあり、いまでも大きな港なので、ここを中心に兵庫県の港湾、ベイエリアを盛り上げていくことは大事だ。その中で水素のサプライチェーンをどう作っていくか。そのために神戸市と兵庫県が、他の自治体に輪を広げていく必要がある。それも官民連携でスクラムを組むことが大事だ」

　久元「水素に関連する産業は、生産こそオーストラリアだが運搬、貯蔵、輸送、などかなり多数の企業が参入する余地や可能性がある。組合や工業会といった枠組みもあるが、それ以外のみなさんにも関心を持ってもらって参入するための技術的な課題を、１つ１つチェックしていく必要があるのだろう」「現在はＬＮＧ（液化天然ガス）の技術基準を参照しているが、水素には専用の基準が必要になるし、いずれ国際基準も必要になる。これまで我が国では国際基準の策定に関われず、国際基準ができあがってから受け入れざるを得ないといった状況があった。国際基準となると国の役割も大きくなるが、どのように国に働きかけるのが効果的かといったことも、まさに県市協調で考えなければならない」

　－－兵庫県ひいては関西圏の水素利活用はこれからどうなると思うか。

　久元「水素エネルギーの利活用がどれだけ広がるかというのが課題になってくる。燃料電池バスは早期に取り入れたい。国にもさまざま支援制度、無料制度があるのだが、国だけではなかなか広がらないので、兵庫県と神戸市が対象を拡大したり、上乗せをしたりしている。ただ行政の支援には限界がある」「水素エネルギーの活用は、もともとは二酸化炭素をいかに出さないかという話。このためカーボンニュートラルに対する理解を進めることが、水素エネルギーの利活用への理解につながっていくのではないか」

関連記事

• ドローンサミット・デモ２）ドローン用パラシュートとエアバッグの装備と作動 (2022/09/04)
• ドローンサミット・デモ１）ハーバーランド〜ポートアイランドへのコーヒー輸送 (2022/09/04)
• 斎藤兵庫知事と久元神戸市長、水素の利用拡大へ連携で一致　「新たな産業集積に」 (2022/09/03)
• みなと銀の武市社長「景気の向きは何に着目するかで違う」　企業の投資は慎重か (2022/09/02)
• 斎藤兵庫知事「未来を作る取り組み発信に意義」　初のドローンサミット神戸で開催 (2022/09/01)