(解説)神戸市長選 久元流「未来志向」評価が焦点か、不祥事対応どうみる
- 2017/10/01
- 23:05
8日に告示、22日に投開票する神戸市長選では、2期目に挑戦する現職の久元喜造氏(写真上=神戸市が公開した記者会見動画より)が務めた過去4年の政策に対する評価が焦点になりそうだ。この4年間に久元氏が強調したのは「ポスト震災20年」。新長田への合同庁舎建設などで1995年に発生した阪神淡路大震災への復興・対策に一定のめどをつけ、三宮再開発や神戸港の機能増強など道筋をつけようとする「未来志向」が強い施策だった。ただ久元氏の描く未来は明るいばかりでもない。さらに政務活動費問題では取り組みの甘さも指摘されている。
9月17〜18日に開催する予定だった「こうべ食の博覧会」が台風で中止になったのは残念だったが、神戸開港150年の記念行事も神戸という都市の個性の中心にある「港」を、将来につなげるための行事が多かった。2月に開催した神戸港湾国際会議では8カ国12港と情報交換や人材育成などで協力するとの覚書を交わした。将来の集荷をにらんだ、いわば営業活動だ。集めた貨物は5月の神戸港開港記念式典を前に開示した、将来の神戸港で積み換える。あくまで将来のために何をすべきか、というのが記念行事の実行委員長を務めた久元氏の念頭にあったことがうかがえる。
三宮再開発も現在の三宮交差点(神戸市中央区)から車道をなくし、歩行者を中心とした広場に作り変えることをメーンに据えた。大阪や京都とも異なる発想で、センター街に元町商店街、さんちか、高架下、北野町と「歩いて楽しい神戸」という特徴を強化する都市の改造だ。神戸に少ない平坦な場所を活用して広場を作るのは、超高齢化社会を控えてバリアフリーなどへの対応にもつながるという観点で、ここにも未来志向が表れた。
ただ久元氏が描く未来もバラ色というわけではない。福岡市に人口で抜かれて国内で6番目の大都市になった神戸市長として、人口減社会をより強く意識したはずだ。久元氏の近著である増田寛也元総務相との対談集「神戸市の挑戦 持続可能な大都市経営」では、従来の方法では都市経営が破綻するとの危機感が書名にもにじむ。人口減への対応は簡単ではないが、自治体の役割が増すことは想像できる。同氏が所有者不明土地問題など相対的に地味な課題でも積極的に取り組むのは、そうした将来への危機感が背景にあるとみてよいだろう。
一方で、不祥事に弱いという印象が残る点は否定できない。久元氏や神戸市は、港島自治連合協議会(神戸市中央区・ポートアイランド)に対して不適切な補助金が支出されるようになった経緯について、納税者に納得がいく説明ができたかは疑問が残る。さらに政務活動費をめぐる問題では選挙で住民の付託を受けた市議が4人辞職し、3人が在宅起訴されるという、きわめて異例の事態になった。さすがに久元氏も8月末に市議会議長に対して「適切な対応」を求める文書を出した。だが、「議会の権限に属することは議会がみずから判断する」(9月8日の定例記者会見)と積極的に対応しない姿勢が、有権者に不十分と受け止められるかもしれない。
神戸市役所
同じく神戸市長選に立候補を表明している光田あまね氏は、所属する日本維新の会の機関紙号外とする配布物に「政務活動費を一旦停止し、全面的な見直しを」と訴える。同じく立候補を表明した共産党兵庫県委員会で委員長を務める松田隆彦氏は9月22日に記者会見して発表した政策に「政務活動費を詐取した自民党市議を告訴します」と盛り込んだ。前加西市長で兵庫県知事選にも立候補した中川暢三氏も政策の柱の1つとして「議会改革」を挙げ、「政務活動費の制度(金額、公開方法など)を根本的に見直します」としている。
コンサートや飲食など夜の経済「ナイトエコノミー」振興にしても、神戸医療産業都市に続く海洋産業や水素エネルギーなどの新産業誘致にしても、未来を語る久元氏の表情は生き生きとして、動画を通じて聞こえる声にも張りがある。対して、不祥事対応などで発言した記者会見などでの立ち居振る舞いは、どこかぎこちない。人には得手不得手があるのは当然だが、久元氏が1期目でまいたタネが芽を出し始めた時期だけに、有権者がどういった視点から神戸市長を選ぶのか興味深い。衆院選との同日選になり投票率の向上が期待できることもあり、結果への関心は一段と高まるだろう。(神戸経済ニュース)
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