(解説)「水族館なのに釣り堀?」で街の外から人を呼ぶ 神戸・旧小学校跡地の挑戦

20220713NATURE外観

【神戸経済ニュース】7月1日に神戸市兵庫区の湊山小学校跡地で全面開業した水族館やフードホールなどの複合施設「NATURE STUDIO(ネイチャースタジオ)」は年間で20万人の集客が目標だ。メーンの集客施設である「みなとやま水族館」の玄関前には、水族館とは真逆の目的ともいえる「釣り堀」を設けた。施設内には地ビールを醸造するブルワリー、ハーブ専門店などが並ぶ。これまで神戸の中でも、あまり注目されてこなかった住宅地で、あえて「わざわざ行きたくなる場所」をめざしたのは、「自然との近さを感じてもらい、住んでもいいかなと思ってもらいたいから」だという。

 NATURE STUDIOは旧校舎を活用した「NORTH」(1枚目の写真左)と「EAST」(同右奥)の2棟と、旧校庭で構成する。4月にオープンしたNORTHには1階にハーブショップ、ブルワリーが入居。2〜3階は学童保育、小規模保育園、就労継続支援施設といった地域施設だ。7月にオープンしたEASTは、理科室や図書室だった1階にみなとやま水族館、体育館だった2階をフードホールにした。旧校庭には食べられる植物などを植えた「ピクニックガーデン」と、ニジマス釣りが楽しめる釣り堀。ワールド・ワン(神戸市中央区)が運営するフードホールでは、施設内で醸造した地ビール「Open Air」やリンゴのスイーツなどに加え、湊山小学校の卒業生である深沢宏樹氏が展開する「マンドリルカレー」も提供する。

 みなとやま水族館は釣り堀が併設されていること自体とてもユニークだが、水族館の内部もかなりユニークだ。ゆっくりと水槽を眺められるようにクッションを配置(2枚目の写真左)したり、水耕栽培する植物が広げる根の間を魚が泳ぎ回る様子などを展示。チンアナゴの水槽の隣には、下から首を出してチンアナゴと並んで写真が撮れる仕掛けや、理科室の棚(同右)を再利用した雰囲気のある展示室も設定した。神戸市立須磨海浜水族園(神戸市須磨区)や、神戸ポートミュージアム(神戸市中央区)の「アトア」といった大規模な水族館とは異なり、限られた展示スペースでも「ゆっくりできる」という、滞在時間の価値を高めるための工夫をたくさん盛り込んだ。

20220713水族館中

 施設全体を企画・運営する村上工務店(神戸市兵庫区)の村上豪英社長も湊山小学校の卒業生だ。住宅地の真ん中に、なぜ水族館なのか聞くと、「地域の役に立つ施設を作ろうと考えたとき、地域の人だけが使う施設にすると、少子高齢化の流れに飲まれてしまうと考えたから」と打ち明ける。「たとえ小規模でも水族館にすると、街の外から人が来てもらえる」「それに元は学校ということで、新しく何かを学んだり、自然を感じたりする施設がふさわしいと思った」。そこで神戸市が募集した跡地活用の事業に応募。神戸市が同社に跡地活用を任せることを決めた。そして訪れた人には「ここが、いいところだと気づいてほしい」と村上社長は話す。

 神戸は「坂の街」といわれるが、意外にも神戸市兵庫区では山手幹線から六甲の山並みが立ち上がるまでの間に、平たんな地域がかなり広がっている。平清盛が福原京の造営地に選んだ場所だ。旧湊山小学校も平清盛邸があった場所とされる。このあたりは、実は800年前から「いいところ」だったのだ。課題は、利用できる公共交通機関がほぼ神戸市バスだけということか。JR神戸駅から出ている市バス9系統、三宮駅前から出ている市バス7系統に乗ってしまえば「石井橋」バス停から徒歩1分程度で到着するが、遠くからの来場客に受け入れられるか未知数だ。地域の未来に向けた「NATURE STUDIO」の挑戦が始まった。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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