ウクライナのITビジネス「いまも受注可能」 神戸市、現地と共同でセミナー

20220413ウクライナITセミナー

【神戸経済ニュース】神戸市は13日、ウクライナのIT(情報技術)企業の現状を日本の企業に紹介するセミナーを同国のIT業界団体と共同で、テレビ会議システムを通じて開催した。現地の約110社が加盟する「ウクライナIT協会」のコンスタンティン・バシュク専務理事(写真右)は、同協会に加盟する企業のIT技術者のうち「70%は西部の安全な地域に移動して仕事を続けており、女性を中心に16%は外国に避難して仕事をしている」と現状を説明。バシュク氏も同国西部の避難先からセミナーに参加した。ITの専門家として2%程度は軍に入隊したが、「85%超が通常通り仕事をしている」という。

 神戸市はウクライナ企業が、高い技術力で欧米企業などから多くの業務を受注している点に着目。昨年からウクライナ西部リビウ市と神戸市とでIT人材育成での連携などをめざし、関係者向けのセミナーと開いたり、日本とウクライナIT協会とのビジネスマッチングイベントなどを開催したりと、関係構築を進めていた。そうした中でロシアによる軍事侵攻後、神戸市がウクライナ側に支援を申し出たところ「ウクライナのITビジネスは活動を続けており、世界からのITニーズに応えられることを知ってほしい」と要望があったという。

 このため神戸市がウクライナ支援の一環として開催したのが今回のビジネスセミナーだ。ウクライナ側からバシュク専務理事のほか、学習ソフトウエア「ア・グノスティクス」のスタルジンスキーCEO(最高経営責任者)、総合的なソフト開発「コンピュツールズ」の事業開発責任者コルニーチュク氏、ソフト開発・ITコンサル「ヤランティス」のパンチェンコ渉外部門長、オンラインや携帯端末向けのソフトウエア開発「CHIソフトウエア」のゴロセンコ日本開発部門長と、4社の担当者が自社の強みなどをそれぞれアピールした。

 各社とも欧米企業向けやアジア向けなどのサービスは継続していることを強調。このうちCHIソフトウエアは日本企業の約30社との取り引きの経験があり、日本の営業拠点を神戸に開設する準備を進めていることも明らかにした。CHIソフトウエアと業務用ソフト開発で連携するルクレ(東京都渋谷区)の高野久取締役と、同じくCHIと協業の経験がある医療系ベンチャーであるシェアメディカル(東京都千代田区)の峯啓真代表がウクライナ企業と協業した経験も語った。ウクライナとの時差がメリットにもデメリットにもなる点などを紹介した。

 あいさつした久元喜造市長(写真左から2人目)は「ウクライナ国民のみなさまがたの怒り、悲しみを神戸市民は共有します」と述べた。加えて8日にセルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使が神戸市を訪れた際も、IT企業が事業を継続し、戦時下も経済活動を維持することの重要性に言及したことを紹介していた。

 セミナーはテレビ会議システムを通じ開催。神戸市が市内の各業界団体などを通じて参加を呼びかけたところ、セミナー開催中を平均して60アカウント前後のログインが確認できたという。参加者からは各社の専門性や発注規模、通信回線の確保を含めたリスク回避の方法など、具体的な質問が相次いでいた。通信は安定し、およそ1時間20分のセミナーは途切れることなく進行した。神戸市の担当者は「スムーズにセミナーが進行したことが何より、ウクライナでITビジネスが継続できることを示したのではないか」(国際課の出口幸治課長)と話していた。

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