(寄稿)[神戸鳥瞰虫探し]日本酒の輸出拡大をリードしているのは誰?
- 2017/08/24
- 22:19
次の一手が注目される環境が醸成されてきた。日本酒市場が輸出の伸びで活気づいている。その拠点となっているのが神戸港。製造拠点としての灘と京都を後背地に抱えている強みが大きく、全輸出量の半分強を占めている。だが、国内からの輸出総量は神戸港経由よりも早いペースで伸びている。
清酒の国内市場は萎縮傾向に歯止めがかかっていない。国税庁酒税統計によると、2015年度の最終消費者向け販売数量は55万5614キロリットル。5年前には60万キロリットルの大台に乗っていた。これに代わって伸びてきたのが海外消費だ。日本食レストランの増加と相まって、現地に溶け込んだ飲み方も広がってきている。
この輸出市場で中心的存在となっているのが神戸港だ。強みは、製成数量で全国の28.5%を占めている灘と16%を占めている伏見を後背地に抱えているからだ。産業として重要なのは、清酒産業は醸造だけではなく、原料であるコメ作りから始まる産業連関の上に成り立っている点だ。国内の酒米の代表は山田錦だが、そのほとんどは兵庫県で作付されている。農業が輸出産業として成り立つ可能性も秘めている訳だ。
そんな環境下にある神戸港の日本酒輸出の増加だが、伸び率でみると全国ベースを下回る。しかも、輸出単価は6割程度にとどまる。うかがえるのは、灘や伏見などの大手酒造メーカーが高級品分野では大きく立ち遅れている構図だ。原料米の供給では圧倒しているものの、最終製品の付加価値では遅れをとっている格好だ。
国内市場の萎縮傾向は規模が大きい主要製造事業者、つまり灘や伏見の大きな蔵元にこなれた価格帯の品ぞろえを推進させた。この構造が、国内消費市場の縮小を緩やかなものにしているとも言える。対照的に、各地にある中小の酒蔵が高付加価値商品への傾斜を深めた。これが地場産業としての規模が大きい灘や伏見の日本酒よりも、全国平均でみた販売単価の方が高くなる結果を生んでいる可能性がある。
現実には、原料生産から最終製品作りまで、ものづくりの現場では多様な取り組みが試みられている。取り組みは、ハードよりもソフトの方が効果は大きい。輸出拠点としての地位を固めるソフト面での取り組みは何だろうか。
(候鳥)
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