久元神戸市長に聞く スタートアップ支援「やりかた変える必要」「自由な発想で起業を」

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【神戸経済ニュース】神戸市の久元喜造市長(写真)に、育成プログラムを最初に開始してから約5年が経過したスタートアップ支援について現状認識や今後の展開について話を聞いた。(聞き手は神戸経済ニュース編集長 山本学)

 ――スタートアップ支援の施策を開始してから5年が経過しました。この間の成果をどうみますか。

 「最大の成果は自治体によるスタートアップという施策を、日本でけん引したことだろう。米国の有力アクセラレーター(育成者)である500 Global(ファイブハンドレット・グローバル、カリフォルニア州=旧名500 Startups)と日本で最初に連携したことで、スタートアップ育成プログラムは海外からの応募が増えた。国内外の投資家や起業家の視線を神戸に引きつけたことが、他の自治体もスタートアップ支援を始める理由になった。先行した結果、神戸で500 Globalのプログラムを受けたスタートアップは、プログラム開始からの累計で140億円を超す資金を調達することができた」

 「国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)の『S3iイノベーションセンター』は、兵庫県と連携して誘致できたところまでは成果だ。だが、新型コロナウイルスの影響で動きが鈍ってしまった。これからが重要だ」

 ――枠組みが他の自治体にも波及した、スタートアップと神戸市役所が連携して行政課題の解決をめざす「Urban Innovation KOBE(アーバンイノベーション神戸)」も成果といえそうです。

 「アーバンイノベーションは途中まではうまくいっていた。しかし、神戸市からスタートアップ向けに提示する課題が、だんだんと小粒化してしまった。アーバンイノベーションを説明するときに引き合いに出す成功事例は、いつまでたっても初期の事例のままだ。本来であればスタートアップとの協業は、もっと市役所全体をクリエイティブにするだろうと思うし、もっとDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させたことだろう。SDGs(国連の持続的な開発目標)への対応も進んだはずだ。現在の状況にはまったく満足しておらず、なんらかの形でテコ入れが必要だ」

 ――神戸市だけではなく、全国の自治体がスタートアップ支援に乗り出しています。

 「その結果として、やはりスタートアップでも東京への一極集中が進んだ。それに大阪、京都にも大きく水を開けられているのが現状だ。東京都内のスタートアップが2020年に年間で3857億円調達したというデータがある。このデータによると大阪府は97億円、京都府は95億円だ。兵庫県は33億円にとどまっている」

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インタビューに答える久元神戸市長

 「大学発ベンチャーの社数でも同じことが起きている。2020年現在で931社の大学発スタートアップが都内に本拠地を構えているのに対し、大阪府は218社、京都府は196社だ。一方で兵庫県は58社にとどまる。兵庫県も神戸市も力を入れてスタートアップ支援を展開しているのに、結果が出ていない」

 「スタートアップが生まれる背景になる、その都市の経済の『地力』が出たということだろうか。あるいは、国や自治体が一斉にスタートアップ支援に乗り出せば、初めからこうなることを予想すべきだったのだろうか。いずれにしても現在のやり方は変える必要がある」

 ――神戸市のスタートアップ支援は、結果として埋もれてしまったのでしょうか。

 「そういうことだろう。だが神戸市に役割がなくなった、というわけでもない。神戸医療産業都市に約380の企業や団体が進出しているが、このうち70社近くがスタートアップだ。起業のためには資金と技術だけでなく、施設が必要な業種ということがある。神戸医療産業都市が医療産業の集積地として知名度を上げてきたのに加え、スタートアップ各社が利用できるラボ(実験室)を用意したことで、相乗的にスタートアップが集まりつつある。こうした『神戸ならでは』の個性を打ち出して、最先端のスタートアップが神戸に集まり、世界に羽ばたいて行くことができるのではないか」

 ――これからのスタートアップ支援は、医療産業を中心とする施策に舵を切るということですか。

 「それは違う。都市の活力を生み出すには、誰かが何か新しいことを始める、起業するということが欠かせないし、それを支える必要はあると思う。AI(人工知能)や再生医療といった最先端の技術を駆使する起業だけでなく、もっと生活に関係するような、身近なスタートアップもあり得るはずだ。それに神戸市では『六甲山上スマートシティ構想』も、『神戸里山・農村地域活性化ビジョン』も打ち出した。都市の隣にある豊かな自然は、東京にはないものだろう。それに神戸には都市型創造産業の集積が特に不足しているという課題もある。既成概念にとらわれることなく、もっと自由な発想で起業してほしい。神戸市は、できる限りのことをしたい」

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