川重、水素40%混焼できるガスタービン「DLE燃焼器」開発 NOxを抑制

20211213川重DLE燃焼器
【神戸経済ニュース】川崎重工業(7012)は、水素を体積比で40%まで混ぜた天然ガスを燃料として使えるガスタービンの「DLE燃焼器」を開発したと発表した。水や蒸気を噴射せずに燃焼温度を低く制御して窒素(ちっそ)酸化物(NOx)の発生を抑えるのがDLE燃焼器の特徴だが、燃料で水素の比率を高めると部分的に高温になりNOx排出量が増える課題を克服。他社製だと20〜30%程度が上限である水素の割合を引き上げた。水素エネルギーの利用による、カーボンニュートラル(二酸化炭素=CO2=排出量実質ゼロ)の実現に向け寄与する。(図はDLE燃焼器のイメージ図=川重提供)

 水素は天然ガスに比べ燃焼速度が速く、燃焼温度も高い。このためガスタービンエンジンのメーンのバーナーで水素と天然ガスを混合した燃料を燃焼させると、局所的に高温になりやすかった。これが空気中の窒素を巻き込んでNOxの発生につながったり、バーナー部品の過熱などを引き起こしていた。だが、川重がこれまで積み上げた水素燃焼のノウハウを生かして、メーンバーナーでの燃焼と、「追い焚(だ)きバーナー」での燃焼に、燃料を配分する割合を適切に制御することで、NOxの発生を天然ガスだけで燃焼したケースとほぼ同等に抑えることができた。

 川重のガスタービンエンジンは、すでにメーンバーナーと追い焚きバーナーの両方を搭載することで、酸素濃度15%の際にNOx排出量15ppm(1ppmは1万分の1%)以下を、幅広い発電出力で実現。大気汚染防止法の規制値である84ppmを大幅に下回る水準だ。水素混焼に対応したDLE燃焼器の開発で、ガスタービン本体を改造せずに、システムの組み替えで水素を混合した燃料を使えるようになる。したがって、すでに設置済みで実績や信頼性があるガスタービンエンジンを使い続けられる。

 ガスタービンエンジンは始動時間が短く、冷却水も不要とあって発電設備に多く使われている。発電設備でのCO2発生を抑制するよう求められる中で、燃焼してもCO2を発生させない燃料を混焼する動きが広がっている。燃焼しても水蒸気しか発生しない水素を天然ガスに混ぜて燃焼させる方式も、将来の普及が見込まれる有力候補になる。そうした中で、既存施設の改修が少なく、投資額も抑えられる選択肢を新たに提示したといえそうだ。

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