伊那市と川重、無人VTOL機で山小屋に物資輸送 23年に能力実証めざす

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【神戸経済ニュース】長野県伊那市と川崎重工業(7012)は、中央アルプス・南アルプスで大容量の貨物を運搬できる無人の垂直離着陸機(VTOL)を使い、山小屋など山上に物資輸送する事業基盤の構築に乗り出すと発表した。川重が開発している無人VTOLを活用し、年を追うごとに高まっている山岳部への安定的な物資輸送の需要に応える。特定の山小屋だけに特化した事業として開発せず、はん用性や拡張性をもった事業にすることで、同様の課題がある全国の自治体に展開できるようにする。(図はイメージ=川重提供)

 伊那市は地方創生推進交付金(ソサエティ5.0タイプ)を主な財源として2021年度に3500万円の予算を計上。川重に事業を委託した。川重は機材の開発に加え、事業全体のとりまとまめと、VTOLの遠隔操縦システム開発、VTOLの運航を担当する。事業には通信のKDDI(9433)と地図のゼンリン(9474)も参加。22年内に飛行ルートの設計と機材の開発を終え、23・24年に想定通りの貨物を運べるかなどを確認する「サービス能力実証」、25年に事業として運営できるか検証する「サービスプラットフォーム実証」を計画している。

 近年のアウトドアブームもあって山小屋の利用人口は増加。そのため安定的な物資運搬が求められているが、現在はヘリコプターによる輸送だけに頼っている。一方で送電線工事や公共工事の増加、パイロット不足などでを受け、輸送用のヘリを確保するのは難しい現状もある。このため現在のヘリに代わってVTOLが物資を輸送できれば課題が解決につながるうえ、同じ課題を抱える他の自治体にも展開できると可能性が高まる。飛行ルートの直下に住む人がいない場所では自律飛行させて、操縦の手間も軽減する。

 川重が開発している機材は「K-RACER(ケイレーサー)」だ。エンジンで駆動し、垂直で離着陸するヘリコプターにも似た外見だが、機体の左右に主翼と推進用のプロペラを搭載して高速飛行する。貨物は100キログラム以上搭載し、継続航行距離は100キロメートル以上、2000メートル以上の上昇能力(標高耐性は3100メートル以上)を想定。すでに平地での飛行試験には成功しているが、山岳特有の気象状況に適応し、長い距離と大きな標高差がある中でも安定した飛行をめざす。

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