(取材メモ)デゴイチは動くか? 神戸駅・広場再整備で気になる蒸気機関車

20210612神戸D51

 「あのデゴイチはもったいないな」と、以前から思っていた。デゴイチとはD51型蒸気機関車のことだ。主に貨物をけん引する機関車で、強力でスピードも出せる優れものだった。国鉄が1976年に保存用以外の蒸気機関車を全廃する最末期まで使われた。そのうちの1両である「1072号機」が神戸駅から少し東の高架橋沿いで、ひっそりと保存してある(写真)。元町商店街の目の前の「きらら広場」で堂々としていたのを覚えているが、1992年に広場の再整備で現在の場所に移設されたそうだ。

 以前は街のシンボルのようなあつかいだったのが、いまとなっては誰かに何かをアピールするわけでもなく、手持ちぶさたな印象だ。神戸駅の駅前広場を再整備するのは、どことなく寂しそうな蒸気機関車に、再び光が当たるきっかけになるのではないかと思った。1072号機は北海道で使われ、必ずしも神戸に縁がある機関車ではないそうだ。しかし、いまのハーバーランドが昔は貨物駅であったように、鉄道貨物も神戸港とともにあった。その象徴として駅前広場に移設されれば、親しまれるのではないか。

 結論としては、D51を動かすのは難しいようだ。神戸市で駅前広場の再整備を担当する職員は「移設するとなると、いったん分解して組み立てることになり、時間も費用も厳しそう」との見通しを話した。それに、機関車は重さが80トン近くある。駅前広場は北側、南側とも地下街の上に整備するため「あまり重たいものを置けないのが現状です」(神戸市の担当者)とも。

 ♪汽笛一声新橋を……。かつて東海道本線の起点だった東京の新橋駅には、ほろ酔いで上機嫌のサラリーマンがインタビューされることで有名な「SL広場」があり、C11型の蒸気機関車(SL)を展示している。だから東海道本線の終点である神戸駅にも「SL広場」があれば対照的で楽しいだろうとも思ったけれど、そう簡単にはいかないようだ。

 「しかし」と、その担当者は続けた。神戸市が今回発表した駅前広場計画の素案には、「そういうこともあって『神戸駅周辺の活性化に必要な施策は、整備対象区域外においても適宜実施します』という一文を付けています」と話す。神戸駅から元町商店街への最も近道は、蒸気機関車を保存しているJRの高架沿いを通ることだ。神戸駅周辺の商業動線を整理するとなると、改めて機関車周辺の歩道再整備も検討対象になるに違いない。

 さらにJR西日本が高架下の店舗を増やすようなら、蒸気機関車の周辺は神戸駅から元町方面へ向かう人でにぎわう可能性も出てくる。そうなると神戸が昔から、そしていまでも海運と陸運の結節点であることの象徴として、貨物をけん引した機関車である「神戸のデゴイチ」の存在感が高まるだろう。都市の整備計画としては優先度の高い話ではないかもしれないが、せっかくのモニュメントなのだから多くの人に再び親しまれることを期待したい。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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