「震災関連死どう防ぐ」「物資は」「仮設住宅は」 神戸市幹部、震災経験から支援協議

2024/01/08  20:10  神戸市職員が現地で撮影した写真を追加しました

20240107神戸市支援本部

【神戸経済ニュース】神戸市は7日、関西広域連合を通じて支援の対象になった石川県珠洲市を中心に、どういった支援を展開するか協議する「神戸市被災地支援対策本部」の第1回会議を開いた(1枚目の写真)。珠洲市では直下型地震であり、密集した木造家屋による火災が発生するなど、1995年に阪神淡路大震災が発生したときの神戸にも似た被害が起きた。阪神淡路大震災の経験から今後どういった支援が必要になるのか、すでに神戸市職員として当時を経験した現在の幹部職員らが議論した。

 そのうえで久元喜造市長は復興までの道のりについて「かなり息の長い取り組みが必要になる」との認識を示した。2011年の東日本大震災の際、支援対策本部を開設したのは半年間、16年の熊本地震では約4カ月だった。だが今回は、設置期間を1年間と設定。さらに延長もあり得るとした。人口およそ1万3000人の半数以上が避難するという壊滅的な被害から、珠洲市が再び立ち上がるまでに強力に支援する覚悟を表した形だ。さまざまな角度から想定される課題を検討し、実際の支援に生かす。

 7日の会議での幹部職員などの主な発言は以下のとおり。

▽森下貴浩福祉局長(1982年に神戸市採用)
・必要な救援物資は当初は水・食料だが、生活が安定してくると日用品等が必要になる。これにミスマッチが起きると、善意で送られたものであるにも関わらず現地で「処分」になり、現地にも負担になる。現地の需要は、とにかく的確に把握する必要がある。
・被災地の行政職員は当初、責任感・使命感でがんばるが、どうしても疲弊してくる。職員も被災者なので、そういった職員に対する配慮・ケアが派遣で現地に入る神戸市職員に求められる。
・他の自治体から派遣で現地に入った職員は、感謝されるだけではない。行き場のない怒りや悲しみをぶつけられるケースもある。支援・派遣が長期間になることを考えると、派遣する職員が帰ってきた際のケアも必要だろう。
・まだまだ大きな余震が続いているのを考慮すると、派遣中の職員の状況を把握するのも非常に大事だと思う。
・仮設トイレは汲み取りトイレなので、バキュームカーの需要がすでに現地で聞かれている。バキュームカーは水洗化に伴い減少し、神戸市にもあまりない。阪神淡路大震災の際、上水道は厳しかったが、下水道は生きているという場所がたくさんあった。何らかの形で水を流すことで、水洗トイレの使用を継続できる可能性は伝えてよいのではないか。
・またトイレは使うと汚れてくる。避難所運営の中で、被災者自らが当番制でトイレ掃除をするといった、自ら使う施設を維持するためのルールを早い段階で確立することが大事だったのを思い出した。

20240108珠洲市健民体育館
救援物資の集積が進む珠洲市健民体育館・6日=神戸市提供

根岸芳之建築住宅局長(1986年4月に神戸市採用)
・阪神淡路大震災の際、担当だった仮設住宅についての動きを振り返ると、1月17日に地震が発生したが、19日には発注、10日後の27日には募集というスケジュールだった。被災者を励ますためにも、将来のスケジュールを早く示すということが大事だという判断だった。
・当時、ばく大な数の仮設住宅を作り、入居は抽選。かつ弱者を完全優先とした。
・当初は広さ26平方メートルで、間取りは2Kのワンパターンで仮設住宅を作り始めた。小さいもの、2階建てなど異なる広さ、間取りの仮設住宅が必要だと考えたが、実際にできたのはかなり時間が経過してからになった。
・結果として市街地の比較的広い仮設住宅に単身高齢者が入居し、郊外の狭い1Kに若年の子育て世帯が入るということも起きた。あるいは高齢者ばかりの団地ができてしまうなど、いくつかのミスマッチが発生した。
・一定期間は居住するので、コミュニティ形成は非常に重要。コミュニティを維持したまま(ご近所でそろって)仮設住宅を作れないか、という指摘もある。元の居住地から、なるべく離れないところで仮設住宅を選んでもらうというのも大事な観点だ。
・仮設ではなく恒久住宅に入居できるメリットもあるので、民間の賃貸住宅を使う「みなし仮設」も積極的に活用していくべき。珠洲市から離れてもよければ、金沢市等の住宅が有効に使えるのではないか。
・多くの被災者は仮設住宅の後、災害復興住宅に入居すると想定されるが、のちの見守り、交流、孤独対策、居場所作りなどコミュニティ形成は非常に重要なので、住居は建設に加えて入居にあたっての工夫というのが非常に大事だと思っている。
・住宅に関してどういった要望があるのか、被災者に一番近く接することができる現地の基礎自治体の職員には、要望事項について積極的に発言してほしい。そういうところに神戸市としても寄り添いたい。

小松恵一建設局長(1982年神戸市採用)
・都市インフラの要は、やはり道路だが、阪神淡路大震災の教訓を振り返ると「被災状況の全ぼうをきちんと把握する必要がある」と強調したい。被災市の職員は、意外にも情報が断片的にしか入ってこず、全体を網羅できてない。ネット上の通行止め情報などだけでなく、最終的には生活道路なども含めて詳細を把握しなくてはならない。この作業をまず支援していく必要がある。
・がれきや土砂で寸断された道路の応急復旧作業(道路啓開作業)については、がれきの中でも重要なものと、そうでないものなどいろいろあるので、地域の土木業者などに協力してもらいながら、沿線住民の意向を聞き、丁寧にやっていく必要がある。
・災害復旧にかかる費用は、どういった工事・工法にするかで大きく変わる。復旧させる際に原型復旧にとどまらず、以前からの課題も一挙に解決する「ビルド・バック・ベター(創造的復興)」という視点は必要だ。このほか阪神淡路大震災による震災復興関連事業、区画整理、まち作り事業などのノウハウがあるので、最大限の支援ができればと考えている。

20240108鈴市役所に向かう途中
珠洲市役所に向かう途中にあった倒壊家屋・6日=神戸市提供

前消防局長の鍵本敦氏(阪神淡路大震災のとき長田消防署員、2023年退職)
・神戸の地震と違った条件として、津波警報の発令があった。地震とほぼ同時に津波が起こったと指摘されている。こういった場合、津波警報下でも生き埋めになった人を救助していくのか、というのは神戸でも経験のないことだ。この段階はすでに通過したが、一緒に何か考えることがあるのなら、ぜひ協力したいと思った。
・現在の珠洲市と阪神淡路大震災で似ている点の1つは、1施設に2000人といった規模の大人数が避難している状況だ。当時は、その中でインフルエンザが流行した。まだ(タミフルやリレンザといった)即効性のある薬が開発されてない中での流行で、大勢の方が肺炎などで亡くなった。これが震災関連死・災害関連死という定義ができるきっかけの1つにもなった。
・2016年の熊本地震では、直接死の5倍の人が関連死とされる。いま急ぐ必要があるのは、震災関連死をとにかく防ぐということだ。地震から生き残った方々が犠牲にならないよう、最大限いろんな形で支援していく必要があると思う。
・現地で救助にあたる消防職員は、相当な精神的ダメージを受けているはず。いまなお余震が続く中、救助を求められることもあるだろう。場合によっては目の前にいる人を助けられない、という状況もあろうかと思う。いま当時を思い出しても、非常につらいものがある。私の経験では3年ぐらいは消えないというかーー。それを克服するには、同じ経験をした人間が寄り添って、いろいろ話を聞くなど、そういったメンタルケアも大事だと思う。
・いまは全国的に市町村、国や県、さまざまな団体が一斉に現地に入って混乱していると思うが、落ち着くタイミングを見計らって、そういったケアに入ることが求められるのではないか。それこそ神戸だからできる支援ではないか。

小原一徳副市長(1984年神戸市採用)
・神戸市は珠洲市を中心に支援するが、珠洲市には浜松市、熊本市、福井県、そして兵庫県も入っていく。こうした中にあっては、支援自治体の間で緊密に連携を図っていくのが、非常に大事になってくる。現地での連携は当然のことながら、危機管理室を中心に本庁の間でも連携をきちんと図って、珠洲市全体をバックアップしていく姿勢で臨む必要がある。

20240108珠洲市応援本部
国や自治体の派遣職員が集まる珠洲市応援本部・6日=神戸市提供

今西正男副市長(1983年神戸市採用)
・避難所での震災関連死をいかに防ぐかという点では、阪神淡路大震災のときにインフルエンザと同時に誤嚥(えん)性肺炎が多かったのを思い起こす。歯磨きができないため口内細菌が広り、それが原因となって誤嚥性肺炎を起こす高齢者が続出した。ティッシュで歯をぬぐうといったことで十分に防げるので、できるだけ啓発していく必要がある。
・阪神淡路大震災と同じ1月の災害という点では、受験生の勉強が大変だという状況がある。神戸では受験生向けの学習コーナーを、難しい中でも作った。受験生に対する対策も大事になってくるのではないか。
・仮設住宅のコミュニティ形成に関する指摘があったが、阪神淡路大震災のときには、がれきを撤去した自宅の後に仮設住宅を建設をしてはどうかという提案をした。周りも同じ場所に残れば、元々のコミュニティの中で安心感を持って暮らせる。がれき撤去の状況にもよるが、高齢者がとても多い現状にあっては、そうした仮設住宅のあり方の検討も必要だろう。
・報道を目的として全国のメディアが被災地に入るが、1週間程度で担当が別の系列局に交代するからなのか、情報がまったく引き継がれず、すべての人に1から説明しなくてはならなかった。これにはたいへん手間取った。ただ、報道がないと被災地を応援する機運が高まらないため、被災した自治体は丁寧に対応をせざるを得ないのが実情だ。当事者の自治体からは、とうてい言い出しにくい状況であり、全国的な組織からマスコミに対して、しっかり引き継ぎするよう要請をするということもあり得ると思っている。

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