神戸ABCの旅(12)「L」ライナーバース

●第12回 「L」ライナーバース

 シリーズ「神戸ABCの旅」の第12回です。神戸の地名をアルファベット順に1カ所ずつ訪ねていくうちに、長らく離れていた神戸の土地勘も戻るのではないかという企画です。1月に「K」の「神戸駅」を掲載して以来、早くも半年が経過し、その間に記事中に登場した「菊水茶寮」が閉店してしまいました。実に残念です。その失意で取材ができなかったのではなく、「L」で始まる地名がなくて非常に苦戦したというのが今回の経緯です。ひねり出した結果ですが、今回もお付き合いをお願いいたします。

 「L」で始まる地名がない、というのは実は盲点でした。ラリルレロで始まる地名は、それなりにたくさんあるのですが、ローマ字で書くとすべて「R」で始まります。いまさら告白するのもアレですが「神戸ABCの旅」というのは、以前テレビ神奈川で放送していた「キンシオ」という番組で、神奈川県を中心として全国を対象に地名を探し、イラストレーターの塩谷均さん(通称キンシオさん)が訪ねて歩く「ABCの旅」という企画を神戸市内でやってみるとどうなるか、という実験でもあるのです。そういえばキンシオさんも「L」を求めて広島県尾道市生口島のレモン谷を訪れたところ、道路標識には「Remondani」と書かれていたのを思い出します。それほど日本で「L」の地名を探すのは難しいのです。

20220725上屋
L-2上屋前にて これ以上は岸壁に近づけない

 とにか地図とか各種資料をひっくり返して探した神戸の「L」が、「ライナーバース」です。神戸港と大阪港の埠頭(ふとう)を管理する阪神国際港湾のホームページにも「LINER BERTH」と書いてあるので、いちおう「L」で始まる地名とみていただきたいと思います。しかしそのスタート地点に選んだライナーバースには、立ち入り禁止で近づけないということに、現地に到着してから気付いたのでした。忘れていたのですが、実際に船が着岸する岸壁はたいてい立ち入り禁止なのです。

 ちなみにライナーバースとは何か、という話をします。いまの貨物は外国貿易にしても国内輸送にしても、多くがコンテナ輸送になっていますが、コンテナではない貨物船が着岸するのがライナーバースです。1967年に摩耶埠頭へ日本初のコンテナ船が入ってくるまでは、すべてがコンテナではない貨物船でしたので、「在来貨物」「在来船」などと言ったりします。陸上輸送において「在来線」の対応語は「新幹線」ですが、船においては「在来船」はコンテナに対する「在来」というわけです。その在来貨物を取り扱うのがライナーバースです。

20220725ニトリ建設中
建設中のニトリ物流センター

 ライナーバースの特徴は、船倉から取り出した貨物を保管するための「上屋(うわや)」が岸壁の近くに建てられているということ。コンテナなら野積みしておいてもコンテナ自体が中の貨物を保護できますが、在来貨物は船から取り出した貨物を、いったん陸上で収納するための倉庫が必要というわけです。神戸港のポートアイランドにはL-1からL−15までのライナーバースがあって、それぞれ貨物を取り扱う運輸倉庫会社が決まっています。L-1は上組、L-2は日本通運、L-3は渋沢倉庫といった具合です。近くまで行って上屋の写真は撮れても結局、立ち入り禁止。近くではニトリの物流センターが建設中でした。神戸港で輸入した貨物を日本各地に運ぶのに、一部は船を使うのでしょうか。

20220725ライナーバース
ポートターミナルから見たL-1〜3ライナーバース

 近寄れないなら遠くから見てみることはできるか、と思ってポートターミナルから望遠で写真L-1〜3のライナーバースを撮影してみたところ、意外にコンテナがたくさん積み上げてありました。阪神国際港湾のホームページによると、「阪神港神戸エリアのライナーバースは、コンテナ貨物の広域からの集貨拠点として、また産業機械や鋼材などの在来貨物の輸出入拠点としても機能しており、多種多様な貨物を取り扱っています」とのこと。コンテナターミナルの補助的な位置付けもあるようです。あと写真の右側というか手前には建設機械が並んでいるので、これは輸出用でしょう。

20220725クルーズ促進
クルーズ船の利用を促すポートターミナル内の展示

 いずれにしても見に行ったのが日曜日だったので、船が1隻も着いておらず、活気のある様子は見えませんでした。神戸港を含めて日本の海運関係は円安と運賃上昇で沸いているそうですが、さすがに日曜日は人影も見えず、ひっそりとしていました。ポートターミナルから引き上げようと思って、ふとみるとクルーズ船の利用を促すパネル展示というか、タペストリー風の展示物が出ていました。新型コロナウイルスの感染拡大以降、同じ運輸でも貨物輸送と旅客輸送は大きく明暗が割れたというのを思い出しながら、ポートターミナルを後にしました。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

関連記事

広告

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

広告

広告

カレンダー

02 | 2024/03 | 04
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

広告

★神戸経済ニュースからのお知らせ

広告