市場と地域の「負のロック・イン」打ち砕く戦略とは 震災記念21世紀研が報告書

20220712報告書

【神戸経済ニュース】兵庫県の外郭団体で公益財団法人の「ひょうご震災記念21世紀研究機構」は12日、報告書「広域経済圏活性化による経済成長戦略」をまとめた。2018〜21年の4年間にわたって継続的に研究会を開催し、政府の地方創生戦略が見落としている広域的な経済圏について分析した。東京一極集中が進んだ背景には市場と地域の両面に、役割を終えて硬直化した社会経済制度「負のロック・イン」があると指摘。SDGs(国連の持続的な開発目標)がゴールとする30年を目標に、関西圏が飛躍するための「3戦略・7戦術」を提言する。

 1年間に新規株式公開(IPO)する会社数をみても、東京に本社を置く会社の比率は年を追うごとに高まっている。成長をめざして東京へと向かう動きの背後には、1980年代の成功体験にこだわり、国内でのシェア拡大をめざす一方でデジタル化やグローバル化に失敗したサービス業や小売業の姿が透けて見える。一方で、地方では未整備のインフラなどを中心に、東京からの企業や労働力の移動を受け入れられない弱さが目立つ。これが「2つの負のロック・イン」の両輪を形成。より東京一極集中を推し進める結果につながっていると説く。

 報告書が提言する3戦略は、産業を高度化する「スマート戦略」、広域的な空間の広がりを意識する「空間戦略」、硬直的な労働市場を柔軟できめ細やかな雇用を可能にする「人材戦略」だ。やや具体化した7戦術として「市場の健全化」「広域連携の深化/広域圏の結束」「地域人材資本市場の構築」「市場と空間の接点をつくる」「知の財産を動かす」「サステナブル経済への加速」を挙げた。2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)を有意義な実証実験の場にできるよう準備を進め、博覧会後に社会実装を加速すべきだと説く。

 研究プロジェクトでは、とりわけ大阪湾を取り囲む「ベイエリア」の各都市での連携を強調。「大阪湾ベイエリア構想分科会」を設置して、集中的に検討した。背景には阪神淡路大震災からの復興と、世界的にIT(情報技術)化とグローバル化が加速した1995年以降、同地域で神戸医療産業都市を除いて都市の新たな価値を生み出せていない、との問題意識がある。報告書は、ひょうご震災記念21世紀研究機構のホームページにも掲載した。本編は表紙含め483ページ、ベイエリア構想分科会編は116ページと大作だ。座長は兵庫県立大名誉教授の加藤恵正氏が務めた。

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