灘の全酒蔵を楽しめる情報発信拠点「灘五郷酒所」 4月に本格営業、東灘・御影
- 2022/01/25
- 03:21
【神戸経済ニュース】日本最大の日本酒の産地である「灘五郷」に関する情報の発信拠点をめざす「灘五郷酒所」が、神戸市東灘区の御影地区で剣菱酒造・内蔵(神戸市東灘区 )跡地にオープンする。灘五郷の酒蔵である26蔵すべての日本酒が飲み比べできるうえ、神戸産の野菜や魚などを素材に日本酒を活用した料理でもてなす。 29・30日に開催するプレ開業イベント「日本酒と食の組み合わせを楽しむ酒蔵セミナー」は全40席が完売と、滑り出しも上々だ。内覧会を20日に開催した。気軽に立ち寄れる店舗形式での本格営業は4月下旬からを予定する。(2枚目の写真左に外観=灘五郷酒所提供)
店内は総延長が50メートルにもなる長い白木のカウンターが特徴だ(2枚目の写真右)。主要メニューを予定する「灘五郷酒所セット」では、灘五郷の西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷を焼印した木ますで酒を提供し、それぞれの味を飲み比べできる。さらに季節に合わせた、おつまみの料理も付く(1枚目の写真)。麹(こうじ)作りの工程で使われていた麹蓋(こうじぶた)をトレーとして活用し、酒蔵の雰囲気で酒と料理を楽しめるようにする。価格などは今後詰める。銘柄や蔵ごとの利き酒だけでなく、温度によって変わる味わいや、食との組み合わせでさらに豊かに広がる日本酒の世界を展開したい考えだ。
運営するのは、昨年9月に神戸ポートタワー(神戸市中央区)がリニューアル工事で閉館するまで、展望3階で灘の酒をそろえて人気を集めた日本酒バー「サケタルラウンジ」を展開したARIGATO-CHAN(アリガトチャン、神戸市中央区)だ。29・30日のイベントで開催するセミナーは文化庁による「上質な観光サービスを求める旅行者の訪日等の促進に向けた文化資源の高付加価値化促進事業」の一環で開催。新型コロナウイルスの感染収束後は、世界に向けての情報発信拠点としての期待も高まる。
日本酒の国内消費量は、食の多様化や他のアルコール飲料との競合などで減少が続く。2020年に日本酒の国内出荷量は41万9000キロリットル。ピークの1978年には170万キロリットル超を出荷したが、往時の勢いはない。この10年でも半分程度に減少した。足元で人気を巻き返したウイスキーの例もあるとはいえ、国内では人口減少で大幅な市場の拡大は見込みにくい。剣菱酒造も2019年限りで4つあった酒蔵を3つに減らし、使わなくなった酒蔵を「灘五郷酒所」として活用するというのが経緯だ。それだけに、改めて海外向けの情報発信には期待がかかりそうだ。
加えて酒造にかかわる技能を持つ職人の減少も、日本酒の増産を難しくしている面があるという。剣菱酒造の白樫政孝社長は「コミュニティができるような場になってほしい」と、灘五郷酒所をきっかけとした人のつながりにも期待する。蔵としては使わなくなったが、カウンターの延長線上には酒造用のタンクを残し、さまざまな色の照明でライトアップする演出をした。現在は空のタンクを「誰が使ってもよいのでは」とも白樫社長は話す。灘五郷の他社や、灘五郷酒所の企画で使うなど、新たな日本酒を生み出す化学反応にも期待できるのかもしれない。
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