(回顧2018)政策の失敗? 地下鉄海岸線の将来は……

20181219地下鉄海岸線

 10月に久元喜造神戸市長が、神戸市営地下鉄海岸線を「政策の失敗」と評価したと一部の報道で伝わり、話題になった。建設費の借金を返済するどころか、日々の営業コストもまかなえていないことから、地下鉄海岸線は「民間なら即運行中止」と久元氏が担当した大学の講義で話した。これについて報道では、海岸線の赤字を追及した政党の主張を合わせて報じたこともあり、そもそも建設しなかったほうが良かったと述べたように伝わっていた。ところで、久元氏の真意にかかわらず、地下鉄海岸線は本当に建設しない方がよかったのだろうか。(写真は海岸線の電車=資料)

 もともと地下鉄海岸線は2002年に日韓共催したサッカー・ワールドカップ(W杯)の試合を神戸で開催するのを念頭に建設した路線だ。現在のノエビアスタジアム神戸(御崎公園球技場)も、その際に整備された。それを思うと、地下鉄海岸線なかりせばW杯もなかったし、2019年のラグビーW杯もなかっただろうし、ヴィッセル神戸がイニエスタ選手を獲得することもなかったかもしれない。海岸線はノエスタでのイベントに合わせて柔軟に増発するなど、ノエスタへの主力交通機関としての役割を担っている。そうした行事の有形無形の効果を考えると、沿線住民の足とは別の観点からも、必要な路線であることはいうまでもない。

 一方で海岸線の失敗は、日々の営業コストをまかなえない需要予測の失敗なのであり、必要である路線を維持するための工夫を怠(おこた)ったという点で失敗だということは言える。現在の路線では赤字かもしれないが、たとえば三宮・花時計前ではなくHAT神戸が終点ならば、三宮〜HAT神戸の黒字で全線のコストをまかなえたかもしれない。あるいは、阪神本線との相互乗り入れができるように作っておけば、兵庫区の住宅地としての価値を高めていたかもしれない。そうした採算確保のための工夫が不十分のまま、単に三宮や新長田とノエスタをつなぐ路線として建設してしまったのが、いかにも「お役所仕事」だろう。

 現状では沿線の魅力を高めるのが海岸線の黒字化への唯一の道なのだが、それも用地などの問題から限界がある。兵庫県が進める初代県庁舎の復元にしても海岸線への誘客策としては、かなり頼りないというのが本音だろう。したがって海岸線の将来はノエスタ神戸と一蓮托生(いちれんたくしょう)だ。今年からスタジアムの運営権を獲得したヴィッセル神戸の運営会社「楽天ヴィッセル神戸」(神戸市中央区)は、ホームゲーム開催日以外にスタジアムをどう活用するか模索を始めた。11月には「ノエスタ演歌ショー」を開催するなど、スポーツ以外のイベントも企画された。ノエスタへの動員数が増えればおのずと海岸線の利用者数も増える計算だが、すると今度は短い4両編成の混雑が問題になるだろうから話は意外に複雑だ。
(神戸経済ニュース 山本学)

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