久元神戸市長が甲南大で講義「大都市財政の受益と負担」 法科大学院で

20181003甲南大講義

 「神戸市の年間行政コストのうち毎年13%が将来世代に付け回されている、これが最大の問題だと私は思います」。神戸市の久元喜造市長は3日夜、甲南大学(神戸市東灘区)の法科大学院が2018年度後期に新設した講座「政策法務」で、「大都市財政における“受益と負担”」をテーマに講義。日本の多くの自治体で、構造的に将来世代に負担を押し付けている現状について説明した。そのうえで「大変ささやかなことかもしれません」と断りながらも、敬老祝い金を廃止したり、認知症対策では市民税の均等割り部分で年400円の増税に踏み切ろうとしたりと、神戸市の取り組みを紹介した。

 本来は国から地方交付税として受け取るはずの財源が滞り、道府県や政令市は臨時財政対策債として多くの赤字地方債を毎年発行している。国も地方に配分するための資金の多くを、国債発行によって調達しているのが現状だ。橋や道路といった耐用年数の長いインフラは、将来世代も恩恵を受ける(受益する)とあって、借金返済という形で将来世代に負担を求めるのが公平だ。だが単年度で消費的に支出する自治体の「経常経費」まで将来世代に付け回すと、将来世代の負担は膨らむ一方だと久元氏は力説した。

 住民の「受益」に相当する行政サービスの適切な程度と、それに見合った「負担」とは何か。特に、社会福祉から教育、インフラ整備、産業振興などと行政サービスの範囲が多岐にわたる政令市の財政では、「正義とは何か」といった問いにも似た奥の深い議論だ。それでも自治体を経営するうえでは予算や条例といった形を作って日々の「現場」を回していく必要がある。そうした実務の中での問題意識を久元氏が、将来の法律家である法科大学院の大学院生や、研究者らにぶつけた形だ。

 授業時間90分のうち約50分で久元氏が講義し、残りの時間を質疑応答に充てた。聴講した経済学部の永廣顕教授(財政学)が、財政支出の抑制について「背景には財政の持続可能性といった議論があるのは専門家にとっては当たり前だが、やはり少ない税金で多くのサービスを受けたいと思う人が多いのではないか」と質問。久元氏は、住民への「説明には、もっと工夫が必要だと考えており、ご意見も聞きたい」「(予算の)決定権を持つ議会の先生方に腹を割って説明する努力は不足していると感じている」と悩みも打ち明けていた。

 久元氏の講義は約40人が聴講。出席した大学院生のほか、久元氏の講義と聞いて聴講に訪れた自治体の関係者も多かったという。大学院生には、久元氏の講義について自分なりの分析を加え、A4版の紙1枚にまとめて来週の授業で提出するよう課題が与えられた。

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