(解説)世界に貢献する気持ちを忘れずに G7保健相会合で何を訴えるか 

 神戸市や兵庫県の行政と経済界は、9月11〜12日に神戸市で開く7カ国(G7)保健相会合を通じて、神戸が世界に貢献するという気持ちを忘れないでほしい。神戸市役所で7日に開いた推進会議の設立総会で、久元喜造神戸市長は「医療産業都市をしっかりと世界に発信することは意義深い」と発言したと報道された。井戸敏三兵庫県知事も「地元にとって1つの扉を開いたと言えるような会合にしたい」と述べたという。国際的な行事に地元の期待が高まるのは理解できる。だが、そもそもG7保健相会合は、神戸の観光や新産業のための場ではない。

 今回の保健相会合では、エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大を踏まえた広域的な感染症対策や、先進国で進む高齢化などが議題になると見込まれる。これまでには重症急性呼吸器症候群や、新型インフルエンザなど、国境を越えた人類の健康への脅威について、日本を含む、世界で最も裕福とされる7カ国の責任者が話し合った。その舞台が今回は、たまたま神戸になったというわけだ。まずは円滑な会合の運営を通じて、世界の人々の健康に寄与するという目的を共有する必要があるだろう。

 もちろん、会合に伴って世界中から多くの人々が神戸を訪れることになる。保健相本人や政府関係者、関連する非政府組織(NGO)のメンバー、報道関係者などのほか、警備のための警察関係者などもいるかもしれない。彼らが神戸を訪れることは確かに旅行だが、あくまでも関心は世界の人々の健康であり−−自由時間も多少はあるかもしれないが−−物見遊山や視察が本来の目的ではない。

 神戸の街であるとか医療産業都市を前面に押し出しすぎることは、かえって目的のためには邪魔になり、むしろ神戸の評価を下げる可能性さえゼロでない。まずは参加者が「神戸での会合、なんかスムーズだったよね」という感想を抱かせるような運営を目指すのが開催地としての最大のおもてなしだろう。そこで評価が高まって初めて、次の神戸での国際会議や、さらには海外から神戸への観光旅行を呼び込むのではないか。今回の推進会議で神戸商工会議所の大橋忠晴会頭が言及したと伝わった「他の都市に引けを取らないホスピタリティー」は、それを意味すると期待したい。

 12年に東京都で開いた国際通貨基金(IMF)年次総会の例を引くまでもなく、すみからすみまで行き届いた、さりげない気づかいは神戸を含む日本のお家芸のはずだ。阪神淡路大震災によって市民が「公衆衛生危機」(久元氏)にさらされた神戸で保健相会合を開催する意義は、おそらく誰が黙っていても参加各国の担当相が意識せざるを得ない。その気持ちを円滑に世界の人々の健康につなげる会議運営こそ、震災で世界中から支援を受けた世界中への恩返しになるのではないだろうか。そうした観点からも神戸市や兵庫県は、外務省や厚労省など政府の関係機関と緊密な連携を保ってほしい。(神戸経済ニュース)

(久元氏、井戸氏、大橋氏の発言は、8日付の日本経済新聞朝刊、神戸新聞朝刊、毎日新聞電子版を参考にした)
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