(解説)立候補のコラムニスト勝谷氏、「井戸氏5選懐疑派」の受け皿になるか

 4月27日に今夏の兵庫県知事選に立候補を表明した勝谷誠彦氏(56)の勝敗は、現職である井戸敏三知事(71)の5選に懐疑的な見方をする無党派層の受け皿になれるかが分けるかもしれない。井戸氏の実績は勝谷氏も評価しており、大きな不祥事や県政運営への不信感が広がっているわけでもない。多くの団体から井戸氏に立候補要請が相次いだ経緯もある。一方で、現在までに立候補を表明した候補のうちで最も若い50代の勝谷氏に対する期待も少なくないようだ。

■不満なき対立候補
 「悪口は言いたくないんですよ。よくやって下さったじゃないですか。今もよくやって下さっている」。勝谷氏は4月27日の立候補を表明した記者会見でこう話し、井戸氏の県政運営を評価した。一般的に自治体の首長選は実績のある現職が有利とされる。そうした情勢で対立候補の多くは、現職の首長がいかに不適格かを主張するために現職の欠点を攻撃する例が多い。しかし勝谷氏は違った。

 在任期間がすでに4期と長く、首長の顔が見えない。そう静かに指摘しただけで、人気の討論番組などで鳴らした辛口論客の姿は影をひそめた。そうした姿を受けて、日本維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)に「何をしたいのか分からない」と言わせたほど。トレードマークと思われた白髪混じりの短髪は黒く染め、サングラスも普通のメガネにかけかえた。むしろ、記者会見では勝谷氏が常識人ぶりをアピールした形になったようだ。

 これまで兵庫県が苦手としてきた全国に向けた情報発信は、現職の井戸氏に比べて勝谷氏に期待が大きいとみられる。文芸春秋(東京都千代田区)での記者、編集者としての経験や、コラムニストとしての活躍は、兵庫県が首都東京から物理的に距離があるというだけの理由で少ないメディアへの登場回数を押し上げる可能性もある。色あせて「セピア色」(勝谷氏)に見えている兵庫県をいきいきと描写すれば、東京から地方への視線を変えることにもなりそうだ。

20170503兵庫県庁
兵庫県庁(神戸市中央区)

 半面、勝谷氏は記者会見で「行政経験がない」と、みずから語る。ただ経験の乏しさは、それだけでない。言論の自由を確保するため記者、編集者といった職種は、所属する会社の経営と距離を置くケースが多い。このため組織人としての経験が未熟である可能性から、たくさんの職員と気脈を通じた県政運営ができるのかが気がかりだ。文筆家が都道府県知事になった例では、東京都知事を務めた石原慎太郎氏と猪瀬直樹氏が目立つが、任期は対照的だった。石原氏は4期16年を満了。石原氏が禅譲した猪瀬氏は1期目の途中で辞任した。仮に勝谷氏が当選して知事に就任した際、県政運営の安定度は現時点でまったく未知数だ。

■県市協調路線の行方
 兵庫県最大の都市で県庁所在地である神戸市の久元喜造市長は、既に井戸氏を支持する姿勢を鮮明にしている。背景には兵庫県と神戸市の協力関係が、これまでで最も良好とされることがあるようだ。井戸氏と久元氏が旧自治省の先輩と後輩であるのも協調路線に寄与しているとみられるが、県市の顕著な関係改善は久元氏の就任以降で、同氏の手腕といえる。勝谷氏が敵対姿勢さえ示さなければ、久元氏とは異なる中央政界へのルートを持つとみられる勝谷氏が知事になるのは、神戸市にとっても好影響の可能性があるかもしれない。

 受けて立つ井戸氏は1日の定例記者会見で知事選について聞かれたが、勝谷氏に対する評価は避けた。一方で自身の選挙戦については「私は粛々と、自分なりの選挙戦をつらぬかせていただこうと思っています」と余裕を見せた。井戸氏は3月24日に立候補を表明するまで、県議会の自民会派をはじめ80程度の団体から立候補要請を集めた「実績」が既にある。これらの団体による推薦が期待され、組織面からは盤石の選挙戦が見込まれる。

 これまで井戸氏のほかに、共産党推薦で元兵庫労連議長の津川知久氏(66)、前加西市長の中川暢三氏(61)がいずれも無所属での立候補を表明しており、勝谷氏は4人の中で最も若い候補になる。神戸市長も前回の選挙で若返り、東遊園地(神戸市中央区)の芝生敷設や神戸国際フルートコンクールの活性化などが実現したことを評価する声は多い。知事の任期が長いことを沈滞ムードと見る有権者・納税者が多いようなら、今後の選挙戦で勝谷氏に風が吹く可能性は残る。(神戸経済ニュース)

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