(解説)Q&A 神戸医療産業都市とは 国内有数の集積、ベンチャー育成など課題

 19日に20周年記念式典を開催した神戸医療産業都市とは何か。場所や機能、経緯、経済効果、今後の課題などについて、改めてQ&A形式でまとめた。

Q 神戸医療産業都市とは、どこあるのか。

 どこからどこまでという、特に明確な境界線はないようだ。神戸医療産業都市の運営を取り仕切る神戸市の外郭団体「神戸医療産業都市推進機構」(神戸市中央区)によると、ポートアイランド2期工事の地区に企業や研究所が進出した場合に「神戸医療産業都市」への拠点開設と呼んでいるという。ただポートアイランド2期工事の地区には、とんかつソースなどで知られるオリバーソースや、洋菓子のケーニヒスクローネなどもあり、必ずしもすべての企業などを神戸医療産業都市と呼んでいるわけではない。神戸医療産業都市に関わることを希望して拠点を開設した医療機関や研究機関、企業の事務所などをまとめて、神戸医療産業都市としている。

Q 神戸医療産業都市はいつ、どういった目的でできたのか。

A 1995年に発生した阪神淡路大震災からの復興事業の一環で、1998年に神戸市が「神戸医療産業都市構想懇談会」を発足させたのが始まりだ。ポートアイランドは2期工事の埋め立てが進んでいたが用途が決まっておらず、高齢化社会で求められる新たな医療技術や医療機器、医薬品などの開発で神戸の経済を立て直すきっかけを作ろうとした。2000年に理化学研究所の発生・再生科学総合研究センター(当時)が開設され、神戸医療産業都市に拠点を置く企業や研究機関が増えた。12年にはスーパーコンピューター「京」の使用も始まり、企業の進出などに弾みを付けた。20年間で病院や研究機関の集積が進み、今年9月末時点で350社・団体が拠点を構える国内有数の医療産業の集積地になった。

20181021神戸医療産業都市の年表

Q 一般の人が利用できる施設はあるのか。

A ほとんどは病院の患者や関係者のための施設だが、一般の人が利用できる施設もある。1つはポートライナー医療センター駅に直結している「神戸キメックセンタービル」の10階に展望ロビーがあり、無料で入場できる。同じ神戸キメックセンタービルには3階には日本麻酔科学会が入居しており、併設されている「麻酔博物館」も一般の利用が可能だ。開館は平日の午前10時〜午後5時。このほか11月23日には理研やコンピューター「京」の一般公開も予定されている。

Q 経済効果は出ているのか。

A 神戸医療産業都市に進出する企業などが増えるつれて、雇用者数も右肩上がりに増えている。17年6月末時点では約9200人で、1万人に迫る勢いだ。神戸市の試算によると2015年度の経済波及効果を推計すると1532億円になった。10年度の1041億円から5年間で経済効果が47%拡大した計算になる。税収効果も5年前に比べて約5割伸びた。企業の進出状況に加え、市内総生産(GDP)と税収との関係などから推計すると、固定資産税・都市計画税、市民税、事業所税の15年度の税収効果は53億円。10年度は35億円だった。

Q 今後の課題は何か。

A 足元で課題と指摘されるのが多いのは、研究機関や病院などが集積していることによる相乗効果を出やすくするにはどうしたらよいか、という点だ。当初は自ら中核的な研究機関や先進病院を担うことを目的に設立した先端医療振興財団が、今年4月に神戸医療産業都市推進機構に改組したのも、相乗効果を出やすくするために神戸医療産業都市のマネジメント役をはっきりさせる狙いがあった。

 ただ、そうした新たな技術と医療面での需要のマッチングの活性化するうえで鍵になるのは、小回りが利くベンチャー企業の存在だ。神戸医療産業都市にはベンチャー企業が進出しやすい環境づくりが不十分との指摘は多い。神戸医療産業都市に本社を構えて上場を果たした企業は、依然として2008年に上場したカルナバイオサイエンス1社にとどまっている。神戸医療産業都市に特化したスタートアップ支援などを、改めて考える必要はあるのかもしれない。(神戸経済ニュース 山本学)

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