上山ワールド社長「強烈に株価を意識した経営したい」 記者会見の主なやりとり

2010928上山ワールド社長

 13年ぶりに東証1部に新規上場したワールドの上山健二社長(上の写真)は28日大引け後に東京都中央区の東京証券取引所で記者会見し、「せっかく上場したのだから強烈に株価を意識した経営をしていきたい」と述べ、収益拡大に積極的な姿勢を見せた。そのうえで「利益を伴わない売上高は追わない。何よりも注目するのはコア営業利益をいかに伸ばすか」と述べ、収益性や採算性を重視すると説明した。記者会見での主なやりとりは、以下の通り。

 --アパレル業界の環境環境をどうみているのか。
 「アパレル、ファッション業界の成熟化は現に進んでいる。オーバーサプライ、オーバーストアの状況は続いていると考えている。ただ私どもは3年前から構造改革に取り組み、低収益や赤字のブランド、店舗をなくすことを進めてきた。競争環境の中で先駆けて戦える体制を作ってきたと考えている。それが売上高・コア営業利益率の6.5%という高い数字に表れている」
 「激化する競争の中で、少なからず業界再編も起きると思っている。そんな中で私どもの(店舗やネット通販などワールドのグループが使用している共通基盤の)プラットフォームを他社にも使ってもらえるという、ある意味でのチャンスが来ていると思っている」

 --今回調達した資金で実施するデジタル化投資とは。
 「Eコマース(ネット通販)の売上高を伸ばすことだけを捕(とら)まえてはいない。グループ会社のためのEコマースの基盤を他社に使ってもらうという、ネットモールの運営委託は既に受けている。さらにリアルのビジネスである企画開発、調達・生産、店舗運営などの流れをシステム化した。この基幹システムを他社にも使ってもらうことでBtoB(企業間)ビジネスを増やす。また投資先に使ってもらうことによって、この投資先の利益率も改善し、ひいては連結の利益への寄与につながる」

 --13年前のMBO(経営陣が参加する企業買収)、非上場化によってできた改革とは何か。
 「プラットフォームの整備だ。MBOを実施した2005年ごろは、大規模なショッピングセンターが全国に作られた時期で、ワールドは年間500店規模で出店した。その結果、ショッピングセンターは百貨店を上回る最大の販売チャネルになった。これが販売プラットフォームになった。加えてファッションウォーカー社を買収してEコマースのモールを組み立て、デジタルのプラットフォームの礎(いしずえ)になった。MBOの所期の目的であった、多業態多ブランドで勝っていくための再現性ある仕組みとして、プラットフォームの整備ができた。特にショッピングセンターへの出店は投資資金が必要だったので、MBOの趣旨に沿っていた」

 --上場初日の株価をどうみるか。
 「本日の弊社の株価は広く投資家の皆様の厳しい評価として厳粛に受け止めたい。せっかく上場したのだから強烈に株価を意識した経営をしていきたい。成熟したマーケットの中でも成長して、なんとしてもお客様の期待に答えると同時に、株主の期待にも答えたいというのが今の気持ちだ」

 --中長期的な収益拡大に向けた方針は。
 「利益を伴わない売上高は追わない。何よりも注目するのは(日本基準の営業利益に相当する国際会計基準の)コア営業利益をいかに伸ばすか。プラットフォームを使ったビジネスは、売上高を伸ばすことではない場合もある。たとえば他社にEコマースを使ってもらった場合はフィー(手数料)ビジネスだ。従来のアパレル業とは異なる、新たなたなビジネスでコア営業利益の半分くらいを稼げるようにというのが将来のイメージだ」

20180928東証アローズ

 --ゾゾタウンやアマゾンといった新たなファッションの担い手とは異なる、強みとは何か。
 「デジタル投資を積極化すると掲げているが、Eコマースのみをデジタルのプラットフォームとは言ってはいない。もっとリアルのビジネスに根ざして、何が当たるのか、何を何枚作るのから始まって、店舗に運んで、販売する瞬間までを基幹システムとしてデジタル化している。したがってゾゾタウンやアマゾンとは少し方向が違う。デジタルのプラットフォームを使うことで、小さなブランドの集合体であるワールドは6.5%という高い売上高・コア営業利益率を出していることに、われわれが注目している。中小のブランドにもわれわれのプラットフォームをぜひ使ってほしい」

 --プラットフォームの他社への提供とはどういったものか。
 「たとえばアカチャンホンポで販売しているマタニティウエアは、弊社がOEM(相手先ブランドによる生産)で供給している。これは生産プラットフォームの提供だ。このほか、減らしたとはいえ2500ある店舗の什器や内装はすべて自前で作っており、これを同業他社に納めて使っていただいている。まったく異なるホテル業界にも家具を納品しているという例もある。デジタルはBtoBを狙っているが、消費者に見える形でもサプライヤーとしてやっていくことは大事だと思っている」

 --今回調達した資金の使途にM&A(合併・買収)も挙がっているが、買収先はどういった会社なのか。
 「ワールドは60ぐらいのブランドを展開しているが、チャネルも価格帯も多岐にわたっている。アパレルブランドは、ブランドマップを相当程度抑えている。このバリューチェーン(価値連鎖)の周辺にある非アパレル企業については買収したい。アパレルブランドは既に多様性を持っているが、再生案件や事業承継案件でアパレルの相談は多い。このため日本政策投資銀行と共同で作ったファンドを通じて投資することになるかと思う。このほかベンチャーキャピタル的にデジタルの先進的な会社に投資することもあるだろう」(2枚目の写真は東証アローズ=28日午後)

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