(解説)兵庫県、本庁舎を建て替えへ 県政150周年記念事業を集約しては

 兵庫県の井戸敏三知事は7月31日の記者会見で、神戸市中央区にある兵庫県の本庁舎を建て替える意向を表明した。建て替えの対象は1号館、2号館、議会棟、西館、別館、と兵庫県民会館。1989年に完成した3号館以外は全面的に建て替える大掛かりなものになる。耐震性能が不足した庁舎の建て替えは急ぐ必要があるが、課題は兵庫県の財政だ。このため「兵庫県政150周年記念事業」は県の本庁舎建て替えに、できるだけ集約するのが望ましいのではないか。(写真は神戸市中央区の兵庫県庁)

20180731兵庫県庁舎

 兵庫県が今年度に入って県本庁舎1号館の耐震診断をしたところ、震度6強〜7の地震で倒壊する恐れがあることが分かった。1995年の阪神淡路大震災の後に耐震補強したが、それからすでに20年超が経過。新たなコンクリートの劣化も発生していたといい、庁舎の建て替えは急務だ。一方、井戸氏が仮庁舎の建設は避けたいと主張したのも理解できる。用地の問題などから仮庁舎を建設して庁舎を建て替える自治体は多いが、2度も引っ越しが必要になるし、仮庁舎の期間は事務が非効率になりがちだ。

 したがって井戸氏が想定しているという建て替え手順の案も妥当といえそう。まず兵庫県公館と県警本部の間にある駐車場に新県民会館を新築、移転する。県民会館の跡地を中心に高層化した新県庁舎を建てて、1号館と2号館の引っ越し先にする。ここまでを2025年までに完成させる。大規模プロジェクトながら、これだけ素早い動きが取れるのは、すべて兵庫県が所有している土地の上での完結しており、新たな土地取得の必要がないためだ。

 県庁舎は老朽化が目立っていたし、実際に1960年代(昭和40年代)に完成した古い建物が多い。兵庫県としても、かねて建て替えの時期を模索していたもよう。これまでも井戸氏は定例記者会見や予算などに関する記者会見で、しばしば話題にしていた。ただ、兵庫県は行財政構造改革を進める中で、2018年度は公債費を除いた支出と収入が均衡する予算を作る必要があった。このため本庁舎を巡っては耐震診断の予算、約4000万円しか盛り込めなかったという経緯がある。

 となると問題になるのは、やはり費用面だろう。兵庫県は新本庁舎と兵庫県民会館の建設などに約600億円かかると見積もっている。現在、庁舎建て替えのための基金が200億円ほどあるという。さらに2年間で100億円積み増し、300億円の「頭金」を確保して2020年ごろに着工。残りの300億円は何らかの形で起債(借り入れ)して、年30億円ずつ10年間で返済するというのが兵庫県の胸算用だ。しかし財政状況は引き続き厳しいと、井戸氏本人がしばしば言及している。

20180803兵庫県本庁舎など概要

 阪神淡路大震災の復興事業で膨らんだ借金はずいぶんと返済が進んだが、兵庫県債の残高は全体で5兆円に迫る勢いだ。財政状態を維持したまま向こう2年で100億円、その後の年30億円は、県債残高に比べれば少ない金額かもしれないが、簡単にひねり出せる金額とは考えにくい。しかも、2020年を通過しても、人手不足で建設コストが下がらない事態も想定される。建設費が100億円単位で上振れる可能性はどうしても残る。

 したがって兵庫県政150周年記念で整備する、いわゆるハコモノは「兵庫県本庁舎の建て替え」に集約してはどうだろうか。神戸市兵庫区で計画しているが、そもそも必要性の疑わしい「兵庫県政資料館」を中止すれば100億円程度の資金が確保できる可能性がある。さらに「神戸ビーフ館の開設」「ひょうごスイーツ博物館構想事業」といった、民業圧迫ともいえる事業構想も中止し、兵庫県が過去150年間でつちかった行政のノウハウを新たな県庁舎にすべて投入するとなれば、納税者である県民の理解も得やすいだろう。いずれにしても県庁舎は必要な建築物だ。立派な兵庫県庁の整備こそ、兵庫県政150周年記念にふさわしい事業だと思うのだが、どうだろうか。(神戸経済ニュース 山本学)

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