久元神戸市長に聞く(3)記者の目 「神戸経済圏」を考える

久元神戸市長に聞く(1)「ひたすら経費節減、そろそろ限界か」
久元神戸市長に聞く(2)「神戸からユニコーン企業を輩出したい」

 インタビューを通じて分かったのは、久元喜造市長は神戸市長でありながら神戸市だけのことを考えているわけではない、ということだ。神戸市は大阪圏・関西圏に位置するとはいえ、京都や大阪とはまた違った歴史的背景や、経済の成り立ちがある。大阪圏の中での役割だけでなく、周辺市町に広がる神戸独自の経済圏を持って世界の大都市と競争していることを、インフラ整備や産業振興といった神戸市の経済政策を考えるうえで、久元氏は強く意識している。

 そうした中にあって「神戸医療産業都市」は特徴的だ。近年、工業用地を再開発する際などに医療関連施設の集積を打ち出すケースが全国で増えてきた。医療を掲げる開発プロジェクトの発表が周辺の地価を押し上げるケースもあり、いわば小さな医療産業都市バブルともいえる様相だ。これは神戸医療産業都市がいくらかでも雇用を生み出すなど、それなりに成果を上げつつあるのを映しているともいえそう。兵庫県なども巻き込んで関連機関の誘致を地道に進めたのが効いている。

 ただ、久元氏もいうように神戸医療産業都市も、国際的な知名度を獲得するほどではない。神戸経済圏の一角というにもやや遠い。神戸の産業政策は「進取の気風」と久元氏はいうが、それは言い換えると「長い目で見て評価する必要がある」ということだ。しかも時代の変化が思い通りに進むとは限らない。神戸医療産業都市にしても現在の姿になるまで20年の紆(う)余曲折があり、それで花にたとえればやっとつぼみの段階だ。

 ロボットや航空・宇宙、水素、ITを使ったスタートアップなど、かねて有望視されながら、東京を中心とした日本企業がなんとなく苦手としてきた分野だ。これに目を付けた神戸市は「改めての進取の気風」といったところか。しかし、神戸の既存産業を支援しない姿勢と受け止められやすい面もある。実際に、そうした観点からのスタートアップ支援への不満もちらほら聞かれる。仮に今後、景気が悪化した局面でも、これらの分野の振興策を粘り強く続けられるのか、久元氏の胆力が問われる。

 ところでインタビューを終えたいま、久元氏が海洋産業を「海のものとも山のものとも分からない」と話していたのは、もしかして冗談だったのかと思い直している。久元氏は淡々と話していたこともあり、何事もなかったように話を聞いてしまったのは不覚だった。どう考えても海洋産業は「海のもの」なのだ。聞き手として「いやいや海のものですよ」と、ひとこと言葉遊びを指摘すべきだったのかどうか。次の機会があれば確かめたい。

(神戸経済ニュース 山本学)=おわり

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