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「Kobe INK 物語」文具業界初のマーケティング奨励賞 開発者の竹内氏に聞く 

 神戸市中央区の老舗文具店ナガサワ文具センターの「Kobe INK 物語による市場創造」が第10回日本マーケティング大賞(日本マーケティング協会主催)の奨励賞を受賞した。万年筆用のインク「Kobe INK 物語」は2007年に発売したナガサワ文具センターのオリジナル製品だ。万年筆インクという低迷していた市場で、マーケティングによって新たな需要を開拓したのが受賞理由になった。

 過去には、発熱・保温する素材を使った肌着「ヒートテック」(ファーストリテイリング)や、洗濯洗剤「アタックNeo」(花王)など全国ブランドが受賞している日本マーケティング大賞。神戸市の会社としては初の受賞で、文具業界としても初の受賞になった。Kobe INK 物語の開発者であるナガサワ文具センターの竹内直行執行役に、製品開発の経緯などを聞いた。(聞き手は神戸経済ニュース 山本学)


 --メーカーではない文具店でオリジナルの商品を作るというのは、大きな決断だったのではないですか。

 「オリジナル文房具づくりは1995年に発生した阪神淡路大震災の前から少し初めていましたが、それが震災ですべてストップしていました。Kobe INK 物語は結果的に震災後初のオリジナル文具になりました」

20180703竹内氏と広田氏

 「震災から10年が経過した2005年に、お世話になった方々へお礼の手紙を書こうと思ったとき、万年筆のインクの色が限られるのに気づいたのが開発のきっかけです。せっかくだから六甲の緑色で手紙を書きたい。復興してきた神戸を発信したいという気持ちでした。毎日店頭に立っていた感触から万年筆の色が豊富になれば売れるだろうな、という印象は持っていましたが、それよりも神戸発の文房具を作りたい気持ちが大きいことに気づいたのです。最初は在庫が残れば、すべて自分で買い取るという意気込みで始めました」(上の写真は竹内氏=左=と、日本マーケティング大賞の審査員を務めた近畿大学の廣田章光教授)

 --手ごたえを得られたのは、いつごろからですか。

 「30色を超えた6年目、2012年ごろからでしょうか。それまでは企画、製作、販売をすべて1人でこなしていました。それがSNSを通じて、国境をまたいで広がり始めたのです。いまでは海外からも三宮センター街の店舗を探してKobe INK 物語を買いに来てくださるようになりました。結局、集中的にお金を投入して活発に宣伝して、といったことは現在までにしたことがありません」

 「デジタル化が進行する時代にあえて手書き、アナログにこだわったのがお客さまに伝わったのかもしれません。また、色の開発に神戸の多くの方が『面白そうや』と協力してくださったのも、とても感謝しています。いまとなっては、神戸の外に出るとナガサワ文具センターよりもKobe INK 物語のほうが知名度を獲得するまでになりました。神戸を世界に発信したいという熱意は、ひとまず伝わっているのかなと思っています」

 --インクの枠を超えた需要を開拓したとも言われています。

 「まず、普通に字を書くこと以外の用途にも使ってもらえたということです。発色が良いから、ということでイラストレーターの方に気に入ってもらいました。イラストの発表会や実演でも使ってもらえました。あるいは、いつも買ってくださるお客さまが、実は(西洋文字を美しく見せる書法の)カリグラフィーの先生だったということもありました」(下の写真はKobe INK 物語のファンから贈られたイラスト)

20180703Kobe INK 物語

 「海外では印鑑ではなくサインの文化なので、自分がサインするときの色へのこだわりも強い、というのはインクの販売を通じて知りました。またKobe INK 物語を使いたいからと万年筆を買ってくださることもあります。たくさんの色を使いたいということから、一本でさまざまな色を使い分けるのに便利なガラスペンを買ってくださる方も、ここにきて増えています。いまでも時間があるときには店頭に立ちますが、お客さまには本当に、いろいろな新しい使い道を教わります」

 --今後の展開は。

 「Kobe INK 物語はライフワークだと思っているので、続けていきたいと思っています。この仕事を始めて以来、休日はいつも(スマートフォンの)iPhoneを持って神戸を歩き回り、新しい色を探しています。文房具が好きで、同じぐらい神戸が好きで始めた仕事です。確かに最初から順調ということはなく、いろんな局面で苦労しましたが、『苦労も楽しいもんや』と続けてこられたのは結局、文房具を通じて神戸を知ってもらうという仕事が、やはり自分に合っていたのだと思います」

 「これまで年に6色ペースで新色を出してきました。今後も同じペースで出るか分かりませんが、次はどんな色が出るのだろう、と楽しみにしているお客さまも多いので、新色は引き続き出していきたいと思っています。実は常に5〜6色を準備しているのです。秋ごろには、また2色ほど出せると思いますので、楽しみにしていてください」

■ Kobe INK 物語 ナガサワ文具センターが2007年に発売した万年筆用のインク。これまでに82色を発売した。このうち定番色である67色は、色名に必ず神戸市内の地名を盛り込んでいる。07年に最初の色として発売した「六甲グリーン」以来、定番の67色に廃番はなく、すべて現在も生産を続けている。50ミリリットル入りで、年間約3万本を販売する。

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Author:kobekeizai
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