(解説)米金利上昇、神戸経済への影響は? 外為相場や海外景気から波及も

 米国では長期金利が上昇している。指標である10年物米国債の利回りは4月下旬、2014年初頭以来ほぼ4年半ぶりに3%の節目を突破。その後も3%近辺で推移が続いている。米大手金融機関JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEO(最高経営責任者)が4%を目指すとの見通しを示すなど、米金利先高観は強まっている。背景には米国で今後も利上げが続くとの見通しがある。こうした海外金融市場の動きに、神戸経済はどういった影響を受けるのだろうか。その波及経路を考えてみたい。

20180511米長期金利グラフ

 米国では不景気に加え、2008年のリーマン・ショックなどを受けて米連邦準備理事会(FRB)が利下げを進め、政策金利は0.25%まで低下。さらにFRBは量的緩和にも乗り出していた。これが2015年12月に9年半ぶりの利上げを決定。これ以後FRBは、16年に1回、17年に3回、それぞれ0.25%の利上げを実施した。今年に入って3月に0.25%の利上げを実施し、市場では年内あと2回の利上げを予想する声が多い。ただ報道などによるとダイモン氏は「米経済の成長とインフレが、多くの人の予想を超える利上げを米金融当局に促す可能性がある」と話したという。

 では、どういう影響が出るのか。海外金利の上昇は、まず外国為替相場に影響するのとみるのが定石だ。日本では日銀による「異次元」の金融緩和が正常化に向かう兆しは見て取れない。国内金利が低位で安定する中、米国の金利上昇は円売り・ドル買いを誘って円相場が下落しやすくなる。実際、昨年末などと比較すれば、足元のドルは多くの通貨に対して上昇する独歩高状態の展開だ。神戸経済に引き付けて考えるとすれば、円安は輸出企業には追い風になりそう。ただ、イラン情勢などの不透明感から原油価格の国際相場が上昇に向かう中、円安による輸入物価の上昇はコスト高につながりやすい。中小の製造業などからは苦しいという声が上がるかもしれない。

 次に金利上昇による景気引き締め効果だ。米国の金融緩和によって出回った資金は、新興国や産油国などのインフラ整備を促した面がある。結果として国際物流が活発になり、新興国や産油国で消費も活発化した。こうした資金の逆流で、新興国などの景気が冷やされ、国際的な荷動きにも影響するだろう。神戸港ではコンテナ取扱個数が17年に過去最高を更新し、18年は20フィートコンテナ換算で300万個と一段の増加を目指すが、こうした流れに水を差すことになりかねない。(写真は神戸港のコンテナ埠頭=資料)

20170219ポートアイランドのコンテナターミナル

 また投資マネーの動きにも目配りしておく必要がある。人民元など米ドルに連動しやすい通貨を通じた海外からの投資資金が、日本国内の地価を押し上げていた面がある。上昇が目立ったのは大阪市や京都市だが、これらの地域で海外勢の資金が流出すれば当然、神戸の地価も影響を受けるだろう。このほかリスクが高いベンチャー企業への投資の中でも難易度が高いとされる「スタートアップ」(創業まもない企業や起業家)への投資資金も集まりにくくなりそうだ。米社と組んで展開している神戸市のスタートアップ支援は特に気になる。

 日銀神戸支店は兵庫県の景気を「緩やかに拡大している」とみており、現時点では景気の推移は順調といえる。だが、金利上昇の影響はじわじわと時間をかけて広がるのが通例だ。リーマン・ショック後の金融緩和がこれまでになく大規模だったこともあり、FRBも従来の利上げ局面に比べて1回あたりの利上げ幅を小幅にとどめ、利上げのペースも緩やか。総じて慎重に利上げを続けている。それでもアルゼンチンやトルコでは混乱が起き始めた。海外発の要因で向こう2~3年内に神戸の景気が悪化する可能性は、念のために意識しておいてもよさそうだ。(神戸経済ニュース 山本学)

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