(解説)スポーツツーリズムは化学変化をもたらすか 神商は情報発信に着手へ 

 神戸商工会議所の神戸スポーツ産業懇話会は2018年度の活動方針に、「神戸の自然環境を生かしたスポーツツーリズムの調査研究」を盛り込んだ。約1年間かけて研究会や先進事例調査などを重ね、19年2月には調査結果と提言を取りまとめる計画だ。これと並行して同懇話会のホームページを7月にも立ち上げ、神戸で開催するスポーツイベントの情報を随時発信するという。「スポーツ」をきっかけに神戸に人を呼び込もう、というわけだ。

 六甲山では古くからハイキングや山登りが楽しまれているほか、最近では最高峰付近の一軒茶屋を自転車でめざす「六甲山ヒルクライム」が人気。海もスポーツに活用でき、地理的特徴が生きるスポーツの資源は多い。だが、これまで地理的、あるいは日本における近代スポーツ発祥の地といった文化的な優位性に頼り、足元の情報を整理していなかった面がある。

 神戸市内のスポーツ大会で経済効果といえば、神戸マラソンの経済効果が兵庫県立大によって試算されている。17年11月の第7回大会は経済波及効果が兵庫県内で74億7000万円、神戸市内で65億2000万円だったという。国内外から約2万人のランナーが出場する神戸マラソンにはランナーの移動、飲食、買い物、宿泊など消費の需要が発生する。

 一方で、神戸マラソンほど規模が大きくなくても、個性的で発信力のあるスポーツ大会は少なくない。スポーツには、実際にスポーツを「する」、スポーツを「見る」、スポーツを「支える」という3つの関わり方があるという。神商の懇話会が立ち上げるホームページには、神戸マラソンほどの大規模な大会でなくても情報を整理して発信することで、選手、観客、さらにスポーツ大会の縁の下の力持ちとして参加したいというボランティアを神戸に呼び込めるのではないか、というのがねらいがある。

 たとえば神戸で長らく続いている「兵庫リレーカーニバル」は、兵庫県から一歩外に出ると一般的な地名度こそ下がるが、22日まで開催した今回大会はインドネシアのジャカルタなどで行われる第18回アジア競技大会(8月18日開幕)の代表選考会を兼ねていた。本来なら、もっと多くの観客を見込める大会かもしれない。ユニークなコースや給食を設定するマラソンの草レースに、全国から問い合わせが相次いだ例がもある。

20180426ノエスタ神戸

 旅行会社も単に応援するだけの観戦ツアーではなく、行き先に合わせて、その土地ならではのツアーを企画する動きがすでに広がりつつある。ラグビー日本代表のオフィシャルサポーターを務めるJTBは、6月16日にノエビアスタジアム神戸(神戸市兵庫区、写真)で開催する日本代表対イタリア代表の試合に合わせた観戦ツアーに、灘の酒蔵見学を組み合わせた。JTBによると「神戸ならではのツアーにするために、本当はもっと神戸の観光地を盛り込みたいのだけれど、時間が限られる中で観光地を1カ所に絞った」(広報担当者)という。

 JTBは大分市で6月9日に開催する日本代表対イタリア代表の観戦ツアーには、別府温泉で「地獄蒸しプリン」を味わうという日程がある。愛知県豊田市の豊田スタジアムで6月23日に開催するジョージア戦の観戦ツアーでは、トヨタ会館で最新の技術を見学するそうだ。余分な日程でスポーツの楽しみを邪魔するようでは本末転倒だが、スポーツとは少し違った「その土地ならでは」の体験による新たな化学変化には期待してもいいだろう。スポーツをきっかけとした意外な観光需要が出てくるかもしれない。(神戸経済ニュース 山本学)

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