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(解説)ゴールデン・スポーツイヤーズで神戸が得るもの 年頭に

 読者のみなさま、明けましておめでとうございます。今年も神戸経済ニュースをどうぞよろしくお願いいたします。2018年は来年から始まる「ゴールデン・スポーツイヤーズ」を控えて、準備の動きが本格化する1年になりそうです。神戸は日本での近代スポーツ発祥の地とされ、スポーツ産業の蓄積もあります。この機会をどのように活かすかは、神戸経済にも中長期的に影響しそうです。(写真は神戸に数多くの近代スポーツを根付かせた日本最古のスポーツクラブ「神戸レガッタ・アンド・アスレチッククラブ」=神戸市中央区)

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■ゴールデン・スポーツイヤーズとは
 ラグビー・ワールドカップ(W杯)のチケット先行販売が一部で今月19日に始まる。昨年11月時点で既に6万人がチケット購入のための登録を済ませており、関心の高さがうかがえる。ラグビーW杯は世界で最も集客力のあるスポーツ大会の1つとされ、神戸でもノエビアスタジアム神戸(神戸市兵庫区)で4試合を開催する。

20180101ラグビーW杯神戸日程

 翌20年にはオリンピック(五輪)・パラリンピック東京大会を開催する。会場は東京都のほか6道県と東日本に偏るが、既に直前に日本で実施する合宿の誘致合戦が加速。神戸市でも2カ国のパラリンピックチームが事前合宿を決めた。五輪も世界で最も集客力があるスポーツ大会の1つで、ラグビーW杯と2年続けて同じ国で開催するのは日本が初めてだ。

20180101東京2020神戸事前合宿

 さらに21年には「ワールドマスターズゲームズ2021関西」を関西広域連合の8府県で開催。数万円の参加料で誰でも競技に参加できるのが特徴で、国内外から数万人単位でスポーツ愛好家が神戸を含む関西を訪れる見通しだ。正式競技6種目、オープン競技1種目の会場を神戸市内に予定する。

20180101ワールドマスターズ神戸開催競技

 立て続けに国際的なスポーツ大会を開催する3年間を、早稲田大学スポーツ科学学術院の真野義之教授が「ゴールデン・スポーツイヤーズ」と名付けた。真野氏は、この3年間について「単なるスポーツの振興ではなく、スポーツの持つ力を利用することで国民全体の集中力を高め活力を漲(みなぎ)らせることができる」(「奇跡の3年2019・2020・2021 ゴールデン・スポーツイヤーズが地方を変える」徳間書店・2015年)と大きな期待を寄せる。

■スポーツ産業の蓄積で追い風にも
 真野氏がいうほど上手くいくかは分からないが、ゴールデン・スポーツイヤーズを神戸経済の追い風にできる可能性は高い。なぜなら神戸市内にはアシックスに加え、ダンロップのブランドでスポーツ用品を展開する住友ゴムと、世界で大きなシェアを獲得しているスポーツ用品メーカーが2社もあるからだ。昨年にはスポーツ用品世界首位の独アディダスが、独国外では初めて神戸市長田区にシューズの研究開発拠点(下の写真)も開設した。

 アシックスも住友ゴムも、製品の製造はかなり海外にシフトしているが、研究開発や商品企画では神戸にある本社の役割が大きい。スポーツ大会をきっかけに販売が伸びるだけでなく、アディダスの進出もあってスポーツ用品の「Designed in Kobe」(神戸で設計した)がブランドになれば、神戸の海外向け知名度は一段と向上しそうだ。既存のファッション産業などとの相乗効果も期待できる。そのきっかけにゴールデン・スポーツイヤーズはなるかもしれない。

 そうした恩恵を受ける企業のすそ野を広げようとする動きも出ている。神戸商工会議所は昨年9月に「神戸スポーツ産業懇話会」を立ち上げ、定期的な会合を始めた。学校やホテル、金融なども含めた幅広い業種の45社・団体が既に参加しており、神商はなお会員企業に参加を呼びかける。年10回の定例会で情報交換するほか、スポーツ産業の規模拡大を目指して、まずは同懇話会への出席を呼びかけるセミナー開催なども計画しているようだ。

■ゴールデン・スポーツイヤーズが残すもの
 ゴールデン・スポーツイヤーズを通じて得られるものは何だろうか。国際オリンピック委員会(IOC)が近年、強調するのは「レガシー」(遺産)だ。IOCはレガシーを「スポーツ」「社会」「環境」「都市」「経済」の5分野にまとめることができると指摘する。このうち国内ではスポーツレガシーに相当する競技場や体育館といったハコモノに視線は向かいがちだが、むしろ別のレガシーの方が歓迎されるのが先進国の流れだ。大会の開催を通じて街中に清潔で快適に使えるバリアフリーのトイレができたり、開催地の住民にスポーツの習慣ができたりしてもよいだろう。

20180101長田アディダス開発拠点

 「Designed in Kobe」のブランド化などは、最も期待されるレガシーの1つかもしれない。そこまで行かなくとも、神戸市は「おすすめランニングコース」でスマートフォンのアプリを使い、自動的に走行タイムを計測できるようにする「神戸スマートランニングサービス」の実証実験をアシックス、NTTドコモと共同で始めたのが一つの例になりそう。神戸市の久元喜造市長は昨年12月5日の定例記者会見で、この実証実験について「ICT(情報通信技術)によるスポーツを通じたまちづくりの試み」と説明した。これが国内外に広まれば、立派にレガシーと言えるだろう。

 1964年に開催した前回の東京五輪・パラリンピックをきっかけに最も普及した物の1つがカラーテレビだった。このことからゴールデン・スポーツイヤーズをきっかけに広まるのも、スポーツに直接関係する物事とは限らないと言えそう。たとえばスポーツの直前に摂る食事は炭水化物が向いている。となると「関西の食」が世界に広まることだって、あり得ないとはいえない。文化的なレガシーと言えまいか。ほかにもレガシー候補は、いくらも考えられそうだ。

 ただ、経済に注目しすぎて肝心のスポーツを楽しめなくなるようでは意味がない。まずはスポーツを楽しむこと。そしてスポーツの醍醐味は、とにかく勝つこと。最も手軽にできるスポーツは、実はスポーツ観戦だ。応援しているチームが勝つと、実にうれしい。負けると残念でくやしい。ランニングなど対戦相手がいないように見えるスポーツでも、記録を更新するのは過去の自分に勝つことだ。ビジネスのうえでは、そうしたスポーツの楽しみを台無しにすることだけは避けたい。

 同様の観点では昨年、開幕5連勝した神戸のプロサッカー男子Jリーグのヴィッセル神戸に、ぜひ今年こそタイトル(称号)を期待したい。地元チームが強いと多様な物事を活性化するのは、プロ野球「広島東洋カープ」の例を引くまでもない。ヴィッセル神戸は昨シーズンのリーグ戦ホームゲームで、過去最高の動員観客数を記録しながら、順位は9位と優勝争いにも参加できず終わった。YBCルヴァンカップは準々決勝で破れ、天皇杯も準決勝で負けた。神戸では女子のINAC神戸レオネッサがタイトルの常連だけに、ヴィッセル神戸の出遅れ感が目立つ。がんばれヴィッセル!(神戸経済ニュース)

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Author:kobekeizai
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