(寄稿)[神戸鳥瞰虫探し]貸家増加は続くか 大阪・貸家着工にピークアウト感
- 2017/09/19
- 23:31
貸家着工動向に転機が訪れている。大阪経済圏では、一貫して貸家着工件数が増加していた。これに引っ張られる格好で、神戸市の着工件数も増加傾向をたどってきたが、ここにきて大阪市の着工戸数が頭打ち傾向を見せてきた。民間資金のうち、会社法人による着工が勢いを失いつつあるためだ。神戸市では依然として個人の貸家着工が活発だが、大阪市では個人資金での着工も減少傾向が見えてきた。神戸市は、減少場面でも大阪市の動向に影響されるだろうか。
貸家着工が増加を続けてきた背景は需給双方から説明することができる。供給側からすれば、老後資金対策としての物件取得が上げられる。運用資産としての賃貸不動産取得もトレンドとなった。相続発生が増加し始めている中で、借入を伴う資産取得で有利な資産承継策も考えられる。歴史的な低金利が、アパート建設資金を貸し手にとっても売りやすい商品になっている。
供給増加を受ける形で、雇用状況の改善が若年層向けに新たなニーズを生んだ。単身高齢者層の膨張も、需要を支えている。需給バランスの安定は、会社建設による貸家市場参入を活発化させてきた。大阪市では2014年頃まで、会社資金による貸家新築が個人資金の1.5倍程度に止どまっていた。今年3~6月には2.5倍を超える勢いになった。ただ、着工戸数は会社法人、個人ともに減少傾向。2~6月実績の着工戸数は会社、個人ともに昨年同月を下回った。
神戸市の場合は会社、個人ともに昨年水準を上回る形で推移しており、大阪市とは様相を異にしている。ただ、神戸市は個人資金の比率が高い。会社法人と比べれば状況判断の機敏さで遅れがちだ。影響力が大きい大阪での需要動向から判断すれば、神戸市の動きも様子見期に入る可能性は高いように見える。
(候鳥)
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